二人+一匹が辿りついたのはとある港町。
そこは以前住んでいた無法地帯とは真逆の、人の活気に溢れた土地だった。
そして今度は誰も足を踏み入れない森の奥深くではなく、街中のかなり立派な貸家に住むと言う。
ヒューガの考えはよくわからなかったが、これまでとは違う生活にヒカルとカズキは大喜びだった。

ある日ヒューガの外出中に一人の青年が訪ねて来る。
ヒカルは初め追っ手ではないかと疑うがどうやら違うようである。
青年はジュン=ミスギという医者だった。
彼の話によるとヒューガは武器商兼腕の良い修理屋であるという。
ミスギは事故で右腕を失くしており、現在は他で類を見ないほど精密な義腕を装着している。
そのメンテナンスをヒューガに頼んでいるらしい。
ヒカルはヒューガが今は殺し屋でないことを知り、安心した。

「これまでは月に何度か遠くからわざわざ来てもらっていたんだけどね。
家を移るからどこか探してもらえないかって相談を受けてね・・・
ちょうどいいから家を提供する代わりに僕の住むこの街に住んでもらうことにしたんだ。
・・・今までそんなこと言ったことなかったのに、なるほど、君がいたから・・・なんだね。」

ヒカルのことを気に入ったミスギは、ここ最近毎日退屈だと騒いでいるフィアンセ、
ヤヨイのお茶の相手になってくれないかと申し出た。
ヒカルは自分が読み書きすら不自由なことを話し、代わりに勉強を教えて欲しいと頼む。
ヒカルを外に出すことを渋るヒューガだったが、結局ミスギに言いくるめられ了承する。

新しい街で仕事を始めたヒューガは、港で昔の仲間ケンと再会した。
彼は組織の人間ではなく、組織に物資を運んでくる商人の下っ端だった。
今では自分の船を持ち、商売をしているという。

「あんたの噂は聞いていたよ。まだ生きていたとは驚きだぜ。
警戒しなくても、俺はあんたを組織に売るつもりなんてこれっぽちもない。
何せ、俺の家族は、政府が組織にやらせた内乱のせいで死んでるんだからな・・・」

自分と同じ境遇だったと知ったヒューガはケンを信用することにした。
そして気になる情報を耳にする。
数年前、政府の命令で組織によって抹殺されたある一族の生き残りを、ボスが探しているというのだ。

「俺も詳しくはよく知らないが・・・ その一族は特殊な能力を持っていたんだそうだ。
それが一体どんな能力なのかはわからないが、
力が目覚める年齢になると制御できるようになるまで封印させるらしい。
そうすることで一族が他と共存できるようにしてきたわけだが・・・結局努力虚しく、
能力を恐れた政府に抹殺されたってわけだ。あんたのいた組織を使ってね。
政府にはもちろん報告されてないが、その時、まだ能力の目覚めていないガキを一人逃したらしい。
あんたの元ボスは逆にそいつを利用しようと、今になって探してるって噂だぜ。」

ヒューガは記憶の糸を手繰る。
おそらく自分もそこにいた。
いつもは3人、多くても5,6人でしか行動しないのに、その時に限ってほぼ全員・・・数十人である屋敷を襲った。
それはもう、暗殺ではなく虐殺・・・
屋敷には火が放たれ、煙が充満していた・・・
いや、あれは煙ではない・・・ 何か、薬草のようなものを焚いていたように思う。
特殊な能力、まだ能力の目覚めていない子供・・・
ヒューガはそれがヒカルではないかと考え始める。

ある日、ヒカルはミスギの屋敷に向かう途中、暴漢に襲われかけている少女を助ける。
無我夢中で数人の大男に挑むヒカル。
そして、自覚のないままにまた力を使ってしまった。
気がつくと、騒ぎを聞きつけたミスギの屋敷の者に気を失ったまま運ばれていた。
何がどうなったかわからないままだったが、ヒューガに心配かけたくないからと言ってミスギに黙っていてくれるよう頼む。
だが不思議な力で暴漢に大怪我を負わせた少年の噂は、徐々に広がっていった。

ミスギやヤヨイと時間を共にし、様々なことを学ぶヒカル。
ヒカルの世界は外へ外へと広がっていった。
そして今まで考えつかなかったことも・・・

「ヒカルにとってのヒューガって何?」
「・・・弟の、代わり・・・なのかな・・・」
「それはヒューガにとってのヒカルでしょう?ヒカルは?ヒューガをどう思っているの?」
「どうって・・・ ヒューガは俺を救ってくれた、人間らしい生活を与えてくれた・・・
ヒューガには一生かけてでも恩返ししたいと思う。」
「ええ。それから?」
「・・・すごく大切で、絶対に失いたくない。ずっと一緒にいたいって、思う・・・」
「ええ。」
「・・・ヤヨイ、俺、今気づいた。俺、ヒューガにも俺と同じこと思って欲しいって思ってる。
俺のこと大切で、ずっと一緒にいたいって思って欲しいって・・・」

ボスがもしかしたらヒカルを探しているのかもしれないと思うと気が気でならないヒューガ。
一方ヒカルはヒューガに対してこれまで以上に特別な感情を寄せるようになり、どうしたら良いのかわからなくなっていた。
今まで当たり前だった同じベッドで寝ることすら憚られるほどになる。
ヒューガにうまく説明することもできず、どうしようもなく追い詰められたヒカルはついに想いをぶつけてしまう。

「だって・・・ヒューガは俺のこと、弟の代わりとしか思ってないんだろ・・・?」
「・・・ヒカル?」
「俺、自分でもわかってるつもりで・・・ ヒューガの望むように弟の代わりに隣で寝て、ヒューガが安心できるように・・・
でも、俺は、本当はもっと、浅ましいことを考えている・・・」
「・・・浅ましい、こと・・・?」
「俺は、ヒューガに・・・抱かれたいんだ・・・」
「っ・・・」
「ヒューガを、愛しているんだ・・・」

ヒカルの予想を裏切って、ヒューガは強くヒカルを抱きしめた。
そして、本当は自分もずっとこうしたかった、弟の代わりだと思っていたのは最初だけだったと告げる。

「ヒカル・・・ 俺はずっとお前が欲しかった・・・。でも、怖かったんだ・・・。
お前にひどい仕打ちをしてきたこれまでの主人達と、同じように思われるんじゃないかって・・・」

心も身体も強く結ばれた二人。
だが数日後、ヒカルはヒューガの前から忽然と姿を消した。

目を覚ましたヒカルは、自分に何が起こったのか全く理解できなかった。
肌触りの良いシルクのシーツがひかれたふかふかのベッド。
ミスギの屋敷にあるような、豪華な調度品の数々。
だが石造りの城壁のような壁は、人の住むところというよりは、まるで要塞の中にでもいるようだった。
そして・・・手足には頑丈そうな鎖・・・

「・・・目が、覚めたようだな。」

目の前に現れたのは、見たことのない男だった。
年齢はヒューガよりも少し上くらいだろうか?
背が高く、体格も良い。
だがそれ以上に目を惹いたのは、男の丹精で凛々しい顔立ちだった。
男は香炉のような物を手にしており、そこから細く白い煙が立ち昇っている。
その香りを嗅いだ途端、ヒカルは頭の奥がひどく痛んでベッドに倒れ込んだ。

「この香りがつらいということは、どうやら本物のようだな・・・
普通の人間にはただの香草だが、一族にとっては一時的に能力が使えなくなる毒草。
能力の目覚めた子供に、力が制御できる時が来るまでこれを使って封印するという・・・」

ヒカルが組織の者に連れ去られたと確信したヒューガは、組織のアジトに乗り込む決心をする。
みすみす殺されに行くようなものだとケンに説得されるが、ヒューガの意思は固かった。
ミスギとケンの協力を得て、ヒューガはヒカルを救出するため組織のアジトのある地へと向かう・・・。



こんな感じの脳内妄想でございました。
「愛してる・・・」とか、マジ恥ずかしいんですけど・・・(汗)
まあ、パラレルだしこんくらいアリだよね?!!
本編で書けなかったマツコジな部分が書けて良かったです。
・・・本編で書けよ・・・というツッコミはなしでお願いシマス。あはー。

この先は考えてません。
基本ハッピーエンド好きなので、たぶんハッピーに終わるんじゃないかしら?

ちょっと書ききれなかったことの補足です。
ボスは若林君でした。(笑)
ゲンゾーはその頭の良さと持ち前の統率力で、若いうちからボスをやっておりました。
実はその地位のために前のボスを毒殺した・・・のではという噂もあり、恐れられる男です。
ヒューガと弟はゲンゾーに見初め(?)られたようです。

それから、ヒューガの弟がなぜ自殺したか、ですが・・・
弟はもともと身体が弱く、とても組織で殺し屋なんてやれるような子ではありませんでした。
それでも殺されずにいられたのは、ヒューガの働きのおかげ・・・
と、ヒューガ本人は思っていたのですが、
実際はゲンゾーに気に入られ、ヒューガの知らないところでお相手(当然あっちの。)をしていたからなのでした。
ヒューガに組織を抜け出す話をされ、絶対に足手まといになると考えていた弟。
さらにヒューガにゲンゾーとの関係を知られてしまい・・・
アジトは海沿いの崖の上に作られていたため、ヒューガの目の前で窓から海へと飛び込んでしまったのでした。

最後にヒカルとカズキの関係ですが・・・
カズキは一族の使い魔でした。
何があったのかは不明ですが、カズキは普通の猫として生きてきたようです。
ヒカルと運命的に出会ったのも、会話できたのも、二人には元々主従関係があったからこそ。
ヒューガがアジトに乗り込んで行く時、当然カズキもついて行きます。
そしてきっと大活躍してくれる・・・はず。(笑)

こんなおまけも含め、かこ様に捧げます!!
ありがとうございました〜vv



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