*この作品は裏館「らぶちょこ」の続きです。
 できれば先に「らぶちょこ」を読んでくださいねv

小さな包み紙を開いて、小さな中身を口の中に放り込む。
あの時と同じ、甘くて、どこか懐かしい味が口いっぱいに広がった。
「太りますよ?」
後ろから聞きなれた幼馴染の声が聞こえた。
「こんなもん、太らんだろ。」
「だって、ここんとこしょっちゅう食べてませんか?チロルばっか。」
言いながら若島津は俺と背中合わせに置いてある勉強机の椅子に腰かける。
ぎい、と背もたれの金具が軋む音がした。
「いいだろ別に。」
「いいですよ別に。」
学食の帰りになんとなく購買へ立ち寄るとそれが目に入って
10円だからまあいいか〜と思ってついつい買ってしまうのだ。
そしてこの小さな甘いチョコレートを口にする度…

思い出す…あの日の出来事

「……///」
いやいやいやいやいやいやいやいや。
あれは、なんつーか、あれだ、ほら…
「若気の至りって」
「それだ。」
ぐるっと椅子を回転させて後ろを見れば、若島津が怪訝な顔でこちらを振りかえったところで。
「…はあ?」
「おん??」
「何で独り言に返事しますか…気持ち悪い。」
やれやれ…と若島津はまた机の方に向き直る。
っつか、独り言でそれはないだろう…
「何が?若気の至りだ?」
「いや、今携帯でニュース読んでて、中学生が卒業式の日に学校のガラス全部割ってって…」
ああ。なるほど。
誰かが歌ってたな…そういう歌。
「で、若気の至りでは許されないな、と。」
「ふん。」
「日向さんは?」
「ん?」
「だから、何が若気の至りだったんですか?」
「う」
「さっき、それだーーーー!!!ジャストミーーーーッッツ!!!って言ってたじゃないですか。」
「そんなに気合入れた返事はしてないだろが。」
「何ですか?」
「まあ、いいじゃねーか。俺の話なんかどーだって。」
「……」
そーですね、と随分つれない返事をされて、若島津は会話を止めた。
つっこんでこねーところが逆にコワイと思いながらも、
これ以上下手な言い訳するのも墓穴を掘りかねないので俺も口を噤んだ。

ピリリリリ…

ふいに手元に置いてあった携帯が鳴った。
『今日で春休みおしまい。お前んとこは?
 ところでコーラ早く買って来てくれ。春休み中も結局こねーし、俺の喉カラカラ〜』
「…・…」
松山からだった。
気まぐれに時々届くアイツからのメールは必ず『コーラ買ってこい』で締めくくられている。
『こっちは今日が始業式だ。大雪で飛行機が飛ばねーから残念ながら今日もお届けできません。』
さっさと返信を打って、携帯を閉じた。
「そうそう、5月に行く学習旅行、北海道らしいですよ?」
「ふーん… 何ぃ?!!」
思わずぐりんっと椅子を回転させて若島津の方を見ると、
「…だから。北海道。」
またも振り返った若島津は怪訝な顔で俺を見ていた。
そりゃいいな…と変な返事をして、俺は今度は静かにくるーっと椅子を回転させ元の位置に戻った。
「どーします?とりあえず、ふらの高校襲撃しときます?」
「…なっ…  なんでだ?」
「軽いジョークに真面目な返事すんのやめてくださいよ。」
ジョーク、そうか、ジョークだよな。
だいたい学習旅行の最中にふらの高校に行けるわけねーし。
富良野じゃなくったって北海道なんつったら観光地だらけだろ。
札幌に函館に…ええと、あと知らんけども。
…というか、何で俺はこんなにも必死になって頭をフル回転させているんだ???



ありえない。
学習旅行で北海道に行ったからって、松山に遭遇するなんてこと。



「まっつんヤッホーーーー!!!!」

だから  ありえねぇってのーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!

反町がブンブンと手を振ると、同じようにブンブン手を振りながら奴が近づいてきた。
「久しぶりーーーっ」
「おう!」
なんでだ…なんでこういうことになるんだ…

夕飯後、反町に呼び出されてロビーまで降りてきたら、いきなり松山が登場した。
学習旅行の行き先は北海道。
そしてうちのクラスと反町のクラス(2クラスずつで行動している。)の本日二日目の宿泊は富良野。
いや、まあ、反町のことだから、そーゆー行動に出ることは予想の範囲内ではあったが…
でも富良野っつっても広いんだろうから(よく知らんが)そんな簡単に、まさか…。
「って、なんで日向さん隠れてるの??」
ふかふかのソファーに思いっきり体勢を低く腰かけて、反町の影に隠れていたがもちろん無駄で。
「おす。日向。コーラまだ?」
にやにや笑いながら松山が近づいてきた。
「?コーラ??何のことですか?日向さん。」
反町が小首を傾げて尋ねてくる。
「…何でもねえよ。」
松山と反町がやいやい話し始め、そのうちどこからともなくサッカー部連中が加わって
いつの間にやらロビー座談会が始まってしまった。
俺は会話にほとんど参加せず、なんとなく遠巻きに、それを見守っていた。

30分ほどして、松山がそろそろ帰ると言い出した。
「日向、送って。」
「…は?!!」
いきなりこっちに近づいてきたと思ったら、またわけのわからんことを言いやがって…
「何で」
「夜道は危険だろ?」
「気味の悪いことをぬかすな。」
「コーラ買ってもらってねえし。」
「……」
コーラを買ってやんねーと、粘りの松山はいつまでもいつまでもいつまでも言い続けるんだろう…。
俺は仕方なく腰をあげた。
…だいたい何で俺がお前にコーラを買ってやらにゃならんのだ。
そんな約束を交わしてなければ、罰ゲームも受けてないぞ。
「あ、日向さん。21時半には戻らないと、点呼ありますからね。」
「コンビニ行くだけだ。10分で戻る。」
ならいいですけど〜 いってらっしゃーい、と反町は手を振る。
俺は松山と連れ立ってホテルを出た。


コンビニはすぐ近くにあって、10分どころか5分で戻れそうだった。
コーラを買っている間に松山は別のところを見ていて、
何やら時間がかかりそうだったので先に外で待っていた。
「お待たせ。行こうぜ。」
「行くって?どこへだ?」
「どこにしよ?ちょっと歩こうぜ。」
いや、俺戻らねーとまずいんだが…
松山はすたすたと歩き出し、俺もとりあえず後を追う。
「お前んち、近いのか?」
「んー。歩いて20分くらいかな。」
なんだ。近ぇんだ…
そら、呼び出されたら来るわけだ。

サッカーの話やら、次の代表合宿や試合の話やらをしているうちに
松山は大通りを外れてどんどん住宅街へと入って行った。
地元なんだから庭みたいなもんなんだろうが、すでに俺が一人ではホテルまで戻れないのは明らかで。
さすがに若干不安になって(点呼の時間もあるし。)松山に尋ねた。
「おい」
「ん?」
「どこ行くんだ?自分ち帰る気か?」
「いや。うち、家族いるし。」
「家族いると、なんだ?」
「え?」
急に足を止めて俺の顔を見る。
そして何やら煮え切らない態度で、また歩き始める。
「おいっ」
「じゃ、ここ。」
もともと目的地がそこだったのか、それともたまたま目についただけなのか、
松山は住宅街の中でそこだけ木が生い茂っている場所に入って行った。

そこは公園も兼ねた小さな神社で。
片隅に遊具が2つ3つ置いてあり、一応子供が遊べるようになっている。
松山は社に近づいてパンパンと手を叩き頭を下げた。
「あそこ座ろうぜ。」
高めの木の下に背もたれのないベンチがあり、俺たちはそこに並んで腰を下ろした。
昼間はじいさんばあさんが座って、ひなたぼっこでもしてそうだが、今の時間はさすがに人影はない。
うちの地元ならヤンキーの一人や二人いそうな気もするが、もともとそういう奴はいなさそうだった。
「これ。」
俺はコンビニの袋ごと松山に差し出した。
「何」
「コーラだろが。」
「いらない。」
「は?」
「俺コーラ好きじゃねえし。」
そういうと、松山はさっき自分が買って持っていた方の袋からスポーツドリンクを取り出し飲み始めた。
「おい…。お前、さんざんコーラ買ってこいコーラ買ってこい買って持ってこいメールしてきただろが。」
「した。」
「そんでコーラ好きじゃねえってどーゆーこった。」
「怒んなよ。お前が飲めばいいだろ。」
「答えになってねえ。」
俺が腹を立てながらもコーラの蓋を開けて飲み始めると、
松山は「結局飲むんじゃんか。」と笑って言いやがった。
「じゃあ、怒らせたお詫び。」
そう言って、先ほどスポーツドリンクを取り出して空になったと思っていたビニール袋をガサガサあさり始める。
取り出したのは
「はい。」
「……」
小さな、四角い、チョコレート。
これは…
単に食いたかったからか?それとも…
「松山、」
「うん?」
あの時のこと、どこまで覚えてる???
喉まで出かけていたが、チョコを口に放り込んだ。
食べ慣れた甘い味が広がる。
「…いや。何でもない。」
「…な。日 向…」
「え」
急に松山が顔を近づけて、でっかい黒目でじっと見つめてきて…
長めの睫毛がゆっくりと下りてきて、両方の瞼が閉じた。
(こっ… これは…///)
誰もいない夜の神社。
静かに目を閉じる、松山。
ここが『松山』でなく、女子だったら完全にキスしているところだが…

口の中に残るチョコの味が、あの時の松山をフラッシュバックさせる
ふたつの身体がひとつに融け合っちまうくらいに抱き合って
キスして

キス して…

『… うれし…』

なんで あの時 あんなことを 言ったんだ???

「ひゅーが」
気付けば松山の目は開いていて、さっきみてーにじっと俺の顔を見ていた。
「キス、してくんねーの?」
「…え…」
当たり前のことを何故しないんだ?というように、松山は俺に尋ね、そしてまた目を閉じた。
「……」
唇を重ねると、松山は焦れたように押しつけてきた。
向こうから舌を入れてきて求められる。
もっと深く、もっと深く。
驚くほど積極的な松山に、どうして俺は、こいつのことを奥手だなんて勝手に思い込んでいたんだろうと思う。

余韻を残しながらようやく唇を離すと、松山は小さく息を吐いて俺に抱きついてきた。
俺は何も考えずに奴の背中に手を回し、髪を撫でる。
「日向…」
「ん」
「俺、もっと早く会いたかった。」
「…」
こんなに直球でこられると、どう答えていいかわからない。
……っつか、松山って
「なあ」
「うん?」
「お前、俺のこと好きなのか?」
疑問に思っていたことを素直に聞いてみただけなのに、なんだろう、この今更感…。
「え?」
松山は身体を離し、どうしてそんなことを聞くんだ?という顔で俺を見た。
わかる。それはよくわかるぞ松山。俺もそう思う。
「…日向、俺のこと好きじゃねーの?」
「…どうだろう?よくわからんが。」
「好きじゃない奴と、お前、こんなことすんのか?」
だよな。
いや、実は俺もそう思っていたんだ。
なんで俺、松山とキスして抱き合ってんだろって。
しかも全然嫌じゃねーし。
「うん… そうだな。」
「そうだろ?」
あの時、松山じゃない他の誰かだったとしたら、俺は同じことをしていただろうか?
同じように薬が入っていたとしても、
全裸のままベッドの上で悶えているのが若島津だったら?反町だったら?翼だったら?岬だったら?
(考えるだけでもおぞましい…)
いや、それが例え女だったとしても、だ。
あの時は、これが女だったら間違いなくヤってるだろうと思ったが…
たぶん、俺にそんな根性はねえな…
相手が女だったらよっぽど後が恐くて指一本触れないだろう。

俺は『松山だったから』セックス、した…???

……なら、松山は???

「お前は、じゃあ、俺だからあんなことさせたのか?」
「当たり前だ。他の奴だったら、素っ裸でもぶん殴って逃げた」
そうか。
じゃあ、松山も『俺だったから』セックスしたって、そういうことなのか。
「と、思う。多分。」
「多分????」
松山が語尾に微妙なことを付け加えてきやがったので、俺は思わず聞き返してしまった。
「多分て、何だ?」
「だって… 俺別に、それまでお前のこと、そーゆー目で見てきたことなかったし。」
なんとなく目を泳がせながら、松山はぼそぼそと話し始めた。
「あのチョコ食ったら身体が変なことになって…そんで何かわかんねー間にお前が俺にエロいことしてきて」
って、何か俺が悪ぃみてーな言い方してんな、なにげに。
「だから、ああ、日向って俺のこと好きだったんだなって。
 初めはどうしたらいいかよくわかんなかったけど、でも、日向なら俺、いいかなって思ってさ…」
「……」
「ちゃんとは覚えてないけど、お前とヤったの、めちゃめちゃ気持ち良かったから。
 別に、だからって、そのっ、それで決めたわけじゃねーけどっ///
 お前のこと、受け入れてもいいって、また、こーゆーこと、してもいいって、思った から…」
顔を真っ赤にして、松山は俯いた。
なるほど…そういうことだったのか…
…ええと。
「話はよくわかった。でもな、」
「うん?」
「俺も別に、あの時までお前のこと好きでもなんでもなかったぞ。っつか、むしろキライだった。」
「えええ?!!何だよそれ!!!!」
さっきまでの可愛げな態度はどこへやら、一変、松山は立ち上がって俺に掴みかかってきた。
「おまっ… じゃ、なんであんなことしたんだよ!!」
「だからそれは、不可抗力というやつで。」
「うわ!!お前最悪だな!!!」
「てめーがあんなエロス全開でせまってくるから悪いんだろが。」
「せまってねえ!!襲ってきたのはそっちだろうが!!」
「誰が襲ったんだ誰がっ」
容赦なく松山のパンチが飛んできて、俺は反射的にその手を掴んだ。
「くそっ」
「落ち着け松山」
「落ち着いてられるか!!」
「俺だって他の奴だったらそんなことしてねーって」
「…… なっ ど、どーゆーことだよっっ」
「だから、お前が俺だからいいって思ったのと同じで、俺も、お前だからしたってことだよ。」
「………っ///」
松山の口がぎゅーーーっとへの字になった。
「ほ、んとか?」
「本当。」
「じゃ、今は、俺のこと、どー思ってんだ?」
また顔を真っ赤にして、今度は目に涙をいっぱい溜めて…松山は絞り出すような声で俺に尋ねた。
…馬鹿な奴。
本当に、馬鹿すぎて、馬鹿すぎて …可愛いすぎる。
「お前は?今俺のこと、どう思ってる?」
逆に尋ねると、松山は すん と鼻をすすって
「…すげー 好き。」
「…ふぅん」
「ひゅ、日向は?」
「ん?」
「だから、俺のこと、どう思ってるんだよ…」
「さあな。」
「なっ/// てめっ…」
また松山が殴りかかろうとしてきたので、今度は立ち上がりつつ避けながらその腕を掴んで引き寄せた。
「っ///」
「嘘だよ。好きでもねえ奴とキスなんかしねえ。」
本当は、まだ自分でもよくわかってねえけど…とは言わないでおいた。
松山は黙ったまま、俺の背中に腕をまわしてくる。

それから俺たちはもう一度キスを交わし、帰り道を急いだ。





点呼の時間はとっくに過ぎていて、俺は入口に先生が待ち構えているだろうと思っていたが誰もいなかった。
こそこそ部屋に戻ると何故かサッカー部連中が集まっていて(ホテルの同室の奴もサッカー部だが)
勝手にトランプで盛り上がってやがった。
「あ、日向さんおかえり〜。遅かったですね。」
反町がひらひらと手を振った。
「…点呼は?」
「俺が代返しときましたよvv」
日向〜、ハイ(←低い声)とその時の様子を反町が再現し、
みんなが よくバレなかったよ… と感心したように言った。
「で?日向さん、松山とどこ行ってたんですか?」
「…コンビニ」
「だけ???」
「あと散歩。」
「ふーん。あ!!俺アガリ!!」
反町がラスト一枚を出し、大喜びで両手を上げる。
そして俺の方に近づいてきて
「ま。お幸せにね〜vvv」
と言ってにやっと笑った。

(完)


ことぶき優花さまに捧ぐ、らぶちょこの続きですvv
一周年、おめでとうございます〜vvvv
らぶちょこでは素敵なイラストを描いて頂きました!!
優花さんにはお世話になりっぱなしですが、これからもよろしくお願いします☆

らぶちょこの時点では全然続きを考えていなかったので
相変わらず書きながら考えながら書きながら考えながら…でしたが
結局エロなしのラブラブな感じになってしまいました。(笑)
チョコより甘いぜお前ら… 

love-top