「ひねくれもののハニーが言う言葉に気を付けなければいけない」
 
 
 
 
 
 
Jrユースの合宿が行われている妻恋合宿所では、何故か「かくれんぼ+鬼ごっこ」が流行っている。
体力が有り余る年頃だし、何か発散させる方法は・・・と誰かが提案したのだが。
どたばたと廊下を走ったりするから最初は監督たちも怒っていた。
けれど、椅子にじっと座って勉強する奴なんて、ほとんどいないのだから諦めたのだろう。
夕食後のミーティングが終わってから消灯時間ぎりぎりまで。
誰かが「今日もやろうぜ〜」と言い出して始まるのだ。
隠れる場所がいっぱいあっても大抵すぐ見付かってしまうので「+鬼ごっこ」なんだろうな、
と俺は思いながら鬼から逃げていた。
ちなみに現在の鬼は若島津と石崎だ。捕まった奴はその場で交代、になる。
消灯時間で終了、な訳だが、
その時点で鬼の奴は次の日の後片付けの当番をやらなくてはいけないというペナルティがある為、
みんな必死に逃げるのだ。
鬼になると、100均とかで売ってそうなダサいたすきを着けなければいけないのも、逃げる理由なのだが。
「逃げないで下さい!!」
「馬鹿!逃げるに決まってるだろうが!!」
合宿所の中のみ、に限定されている為、廊下を全速力で走り抜ける。若島津の奴、意外と足速いからな・・・。
「うわ!」
「お!新田、みっけ♪」
「・・・マジっスか・・・?」
反対側の廊下の角から走ってきた新田が若島津に捕まったようだ。ふー、やれやれ。
少し座って休もう、と足を踏み入れた合宿所の外れにあるロッカールームには、先客がいた。
「松山」
「日向?・・・おまえ、鬼じゃないよな?」
「違えよ」
「あー、良かった〜」
ロッカールームに設置されているベンチにごろり、と寝転がっている松山は、うーんと伸びをして。
「ここって、意外と穴場かも」
にかっと笑うので「へー」と、釣られて笑顔を返した。
「隠れる場所がいっぱいあるから、逆に誰も来ないのかもな」
「そうかもな」
「つかさ〜・・・腹減ったな〜・・・」
「は?おまえさっき夜飯食ったばっかじゃねえか」
「だって〜・・・」
松山は細っこい体のくせに、かなりの大食いだ。合宿初日の昼飯の量を見て、みんな驚いていた。
カロリーコントロール栄養面とか五月蝿く言われてるけど、
量が増えてもそれをきちっと守っていればいいんだろうな。
「あ」
「ん〜?何?」
ジャージのポケットの中を漁っていると、ビニールに包まれた飴玉が一つ出てきた。
「ほれ。これで何とか足しにしろ」
「お♪サンキュー」
夜飯が終わった時に食堂のおばちゃんからもらったんだよ、
と付け加えると「マジ?俺もらってねえし!」と俺に向かって怒りやがった。
「ちぇー。日向ばっか、可愛がられてるよなー」
「そうか?おまえも可愛がってもらってるだろ?菓子とか結構もらってるし」
「まあ、そうだけど」
と言って、松山は小さい包みをゆっくりと開けると、真っ赤な色の飴玉を取り出して口の中に放り込んだ。
「ん〜・・・甘い・・・いちご味かな?」
「足しに出来そうか?」
「うんv」
・・・おい。そんな可愛い顔して笑うなよ・・・。襲っちまうぞ、コラ。
なんて考えていると、ロッカールームの前の廊下にどたどたという足音が響くのを聞いた。
「待てー!!」
「誰が待てるかー!」
声の主はどうやら石崎のようだ。大声で待ちやがれーとか何とか叫びながら誰かを追いかけている。
「石崎、まだ鬼なのかよ」
「明日の当番は決まりだな」
「うわ。ひでえなー」
「だったらおまえが捕まりに行けよ」
「やなこった」
松山が舌をべーっと出してきた。おまえは小学生か!と言う前に、また廊下に足音が響いたので止める。
「日向?」
「しー・・・」
人差し指を口元に当てて黙るように促すと、松山は素直に従った。
人の気配が段々ロッカールームに近付いてくる。
まずいな、と考えた俺は、松山の腕を引っ張ってちょうど目の前にあった大きなロッカーの中に逃げ込んだ。
耳障りな金属音を立てて閉じられたドア。それと同時に、ロッカールームのドアが開けられたようだ。
「あれ〜・・・?誰かいたような気がしたんだけどなあ・・・」
隙間から聞こえる声は新田だった。一応部屋の中を確認して、すぐに廊下へと出て行ったけど。
「あー・・・びっくりした・・・」
「ロッカーに入って正解だったな」
「おまえ、こういう時だけ機転が利くよなー」
「一言余計だ」
松山の言葉に少しむっとしながらも、ドアを開けようと手を伸ばす。
「? あ、れ・・・?」
「どした?」
「・・・開かねえ・・・」
「は!?」
「ちょっと待て。・・・駄目だ。やっぱ開かねえ」
「マジかよ・・・」
押しても駄目なら、と引いてみたが開かず。
ロッカーの中は幸い空っぽだったけど・・・どうすればいいんだ?
「大声出して助けてもらうか?」
「そしたら捕まっちゃうじゃん」
「そうだが・・・明日の朝まで助けが来なかったら?」
「う〜ん・・・どうしようか・・・」
対策を考えているような松山の方に体を向けると。
・・・距離が近い!
広い、と言ってもロッカーの中だ。幅は俺の肩幅よりあるからいいけど・・・。
腕を動かすことができて良かった。何とかしてここから脱出しないと。
そうじゃねえと・・・練習以外でこんなに距離が近いの久しぶりだから、凄いヤバイ。
心臓が爆発しそうな感じ、ってこんななのかな?
なんて色々考えている俺の気持ちなんて知ってか知らずか。
松山は独り言のようにぶつぶつ呟きながらロッカーの中を観察している。
「そういえばさ。小学校の頃閉じ込められたことあるぜ」
「・・・マジで?」
「練習の休憩中に寝ちゃって。んで、監督に怒られて」
「虐待じゃねえのかよ?」
「違えって。ここで反省しろー!とかで、一時間くらいかなあ」
「へー」
「なあ、日向・・・」
「んー?」
「腹、減った〜・・・」
その場に座り込みたい、とばかりの声で松山が俺に凭れ掛かってくる。
腹の虫がぐーと鳴っているので、本当に腹が減っているのだろうが・・・色気のない奴だな。
って、ぎゃー!そんなにひっつくな!!
「やっぱ、飴じゃ満たされねえよ〜」
「そんなの知るか」
「ひでーなー。・・・お裾分け、してやろうか?」
「はあ?」
俺が間抜けな返事を返すと同時に松山は俺の頬を両手で掴んで。
・・・おい。いきなりこんなキスしやがって・・・。
松山の口の中に入っていた飴玉が移動してきて、口の中で踊る。
「ん・・・ん、っ・・・」
舌を絡ませると、松山の喉が鳴った。
「甘え・・・」
「たまにはいいじゃん、つか、おまえ甘党だろ?」
「あのなあ・・・」
「日向、あのさ」
「今度は何だ?」
「だからー。腹減った」
「・・・え?」
「俺のお誘い、断るつもりか?」
腕を俺の首に絡ませて、至近距離で妖艶な笑みを浮かべる松山の姿に暫し呆然とする。
何だよ。俺ばっかりどきどきしてたんじゃねえか!
つか、アレか?小悪魔系か!?
そう分かると凄くムカついて、松山の後頭部に手を当てて逃げられないようにすると、
噛み付くように口付けをした。
「ん、あ・・・、っ」
小さくなってもうなくなりそうな飴が、互いの口の中を移動する。
キスをしながら胸に手の平を移動させると。
(・・・あれ・・・?)
松山の心臓・・・早鐘打ってるみたいだ・・・。
何だよ。こいつもどきどきしてたのか、と思ったら急に嬉しくなって。
「どうなっても知らねえからな?」
耳元で囁いたら、首まで一気に赤くなりやがった。
これだから、止められねえんだよな・・・。
 
 
 
 
 
結局、消灯時間の点呼の時に俺と松山がいないってんで騒ぎになって。
探しに来た連中に助けを求めて救出してもらった。
こんなおんぼろロッカー、早く処分してくれ。
・・・まあ、結果的にいい思いをしたけどな。
「日向ー!腹減ったー!!」
「・・・はいはい」
夜食を提供してもらおうと食堂へ歩いていく松山に声をかけられて、
俺は返事を返しながら口元を緩めた。



ミナ様ありがとうございました!!!
私が書きたいな〜と思っていたけど進まなかったシチュエーションを
是非ミナさんに書いて欲しい!という無理なリクエストを快く引き受けて下さいましたvv
わあvvv
ムチャ言ってみて良かったぁvvv(コラコラ)
中学生の二人が鬼ごっこをサボってるなんて、かわゆいではないか〜と思っていたら、
ちょっ…あんたたちっ やることやってるわね!!みたいな。(笑)
子供のイタズラの延長みたいな感じがまた萌えます!!!
それにしても、最終的にどこまでいたしたのか…気になります!とミナさんにお伝えしたところ
「松山くんはお腹いっぱいになったことでしょう」とのことでしたので…
うふふvvあとはみんなで妄想しましょうvvv
ありがとうございましたぁぁぁ!!!!

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