気が付くと、そいつは俺の掌の上にいた。

「おたんじょーび おめでとー ひゅーが♪」
「・・・・・」

なんだ?これ?

そいつは人形みたいに小さくて、でもちゃんと生きてて、しかも松山だった。

「・・・・松山?」
「それは おおきいほうの ひかるくん おれさまは ちいさいほうだ」
「小さい方でも松山なんだろ?」
「よびすてに するんじゃねえ!!」

ちびのくせに、ホンモノの松山と同じく憎ったらしいたらねえな。こんにゃろう・・・。


ミニマツはなぜかふらののユニフォーム姿で、そしてなぜか顎から水色のリボンをかけて、
頭のてっぺんでちょうちょ結びしていた。

「その、リボンはなんだ?」
「ひゅーがへ ぷれぜんとだ」
 「お前がプレゼントなのか?」
「そーだ ありがたくちょうだいしやがれ」
ミニマツは偉そうにふんぞり返ってそう言った。

「・・・ま、もらってやってもいい。」
「なんだとぅ?!」
ってか、誰からのプレゼントなんだよ・・・。こんな嫌がらせをするのは、松山本人か?
それとも反町か若島津なのか?
なんにしろ迷惑だ・・・。

「おれさま ひゅーがのために ひとつだけ いうこと きいてやるぞ?」
ミニマツは俺の手から「うんしょ」とか言いながら、テーブルの上に降りた。
「一つだけかよ。」
「ひとつ だけだ」
「ケチだな。」
「はやくしないと なしにするぞ」
「・・・じゃあ、」
参った・・・。思いつかん。
リアルサイズの松山に同じこと言われたら、あーんなことやこーんなこと(放送禁止用語等)してもらうのにな。
このミニミニサイズの松山に、一体何ができるってんだ・・・。
「はやく はやく!」
「じゃあ、俺のこと、名前で呼んでくれるか?」
「なまえ?」
 ミニマツはなんだかちょっと恥ずかしそうにモジモジして、顔を赤らめた。
むっちゃかわえーーーなあ!!をいっ!!やっぱりもらって良かったかもしれん・・・。
「・・・・こじろー」
「聞こえねえな。」
「こじろー!」
うおおお!!こんな日が来ることをどれだけ望んでいたことか!!
って、いや、どうせ無理だと思ってたから、たいして望んでもいなかったんだけどな・・・。

「光・・・」
「こじろー」 
「光。」
「もんじろー」
「変えるな。」
ミニマツは「うふふ」と笑うと、嬉しそうに「こじろー もんじろー」と言いながらテーブルの上をスキップしてぐるぐる回った。
無意識に俺の頬の筋肉も緩んでしまう。
テーブルに顎をのっけて、あいかわらずスキップを続けるミニマツを眺める。

と、突然、
「もんじろー きーーーーっく!!」
小さなスパイクが、俺の顔面めがけて飛んできた・・・。




 ピリリリリ ピリリリリ ピリリリリ・・・・



ん・・・?
携帯が鳴ってんのか。
俺はベッドからテーブルに手を伸ばし、携帯をとった。

「もしもし?」
「よう。元気か?」
「・・・・・誰だ?」
「寝ぼけてんじゃねえぞ。」

松山だった。

「・・・・や、なんか、変な夢見てて・・・」
「夢?どんな?」
「・・・覚えてない。でも、変な夢だった。」
「ふうん。」
「何だ?何か用か?」
「別に。」
・・・何が、別に、だよ・・・。
「・・・誕生日、おめでとう。」
「・・・・・・」
「12時過ぎただろう?」
俺は部屋の壁掛け時計に目をやる。確かに12時をまわっていた。いつもより随分早く寝てたんだな・・・。
ん?ってか、イタリアで夜中の12時って、日本は何時なんだ?
「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
なんだかなあ、と電話の向こうで松山が小さく笑う。
「お前んちって、案外立派なのな。」
「ああ?・・・って、なんで俺んち知ってんだ?」

ピンポーン

ん?チャイム?
「ちょっと待て、松山。誰か来た。」
俺は携帯を持ったまま、玄関に向かった。
ガチャリ、と鍵をまわし、ドアを開くとそこには・・・
「よ。」
「・・・・・」
なぜか松山。
しかも、顎から水色のリボンをかけて、頭のてっぺんでちょうちょ結びしている・・・

松山は勝手にずかずかと中に入ってきた。
「あ、これ別に俺がプレゼントとか、そーゆー寒いのじゃねえからな。」
「じゃあ、なんだよ。」
「陽気な酔っ払いのおじさんにつけられたんだ。」
・・・何もかもがわけわからん。
「お前、なんで・・・」
「飛行機で来たに決まってるだろう。」
そんなもん。と、松山は言った。
松山はスポーツバッグを放り投げると、さっきまで俺が寝ていて、まだ生温かいだろうベッドにどっしりと座った。
しかもあいかわらずリボンはそのままだし。
「なんでってのは、移動手段の話じゃなくてだな、」
「さっきからうるせーな。来たかったから来たんだよ。」
来たかったから来たって・・・ それは思いっきり俺を喜ばせているってことに、こいつは気付いているのだろうか?

俺はベッドに座ったまま、部屋の中をきょろきょろと見回している松山の前に立った。
「これ」
「・・・ああ。」
忘れてた。と、松山はようやくリボンをはずす。
「・・・どっからつけてきたんだ?」
「なんとかって駅の近くのなんとかって店の・・・」
「・・・もういい。」
「とにかくタクシー乗る前だ。」
「タクシー乗せてもらえて良かったな・・・」
俺は思わずため息混じりの笑みを漏らす。
それから、さっき松山から取ったリボンをくるくると指に巻きつけながら言った。
「光。」
「な、なにいきなり名前で呼んでんだよっ///」
「いいじゃねえか。誕生日なんだし。」
「いかねえ!!」
「俺のことも、名前で呼んでくれていいぜ?」
「呼ぶもんか!!」
顔を真っ赤にして怒る松山がかわいくて、俺は素敵な悪戯を思いついてしまった。

「なあ、ちょっと、手ぇ出してみ?」
「こうか?」
「両手。」
「ん?」
俺は松山の手を掴むと、リボンでぐるぐる巻きにしてやった。
「のわ!!何だよ!!」
「だから、誕生日だし。」
「意味わか・・・」
「せいっ」
遠慮なく松山をベッドの上に押し倒す。
「わっ・・・ ちょ、ちょっとっ///」
「俺の誕生日と俺達の再会とU−21快勝と夢コラボ実現間近を記念して」
「後半よくわかんねえぞ?」
「キスしてもいいか?」
「ああ?!調子にのってんじゃねえぞ!!コラ!!」
蹴ろうとした脚も軽くに掴んで押さえ込み、縛った手を頭の上に持っていく。
「・・・ひかる・・・」
「な・・・///」
「ダメか?」
「・・・・・・」

目線を逸らす松山・・・。そして・・・


「ダメに決まってんだろがーーーーーー!!!!!」

                  


お約束の「バースデー」逆バージョンです。
あいかわらずうちの松山さんはひねくれていますね・・・(苦笑)
まあ、でも、なんつーか、幸せそうだな。ははは・・・。

「バースデー」と読み比べてお楽しみいただければ幸いでございます。
イラストは時間あったら描きたいな〜。でもなさそうだな〜(泣)

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