「よォ、日向」
「・・・松山」
振り返るとそこには松山が立っていた。
準決勝で南葛に負けちまったってーのに、妙に爽やかな表情で。
悔いることなど一欠片もない、全てを出し切った・・・そんな顔だった。

「お前、北海道に帰ったんじゃなかったのかよ。」
「バカ言うな。お前と翼の対決を見ないでどうする。」
にやっと生意気そうな笑みを見せる。
腹が立つことに俺は、こいつのこういう勝気なところが結構気に入っていた。
もっと近い存在だったのなら、きっといい友人関係を築けていただろうと思う。

空は高く、真っ青に晴れ上がっていた。
スタジアムの壁の白と、空の青のコントラストが目に眩しい。
この時期には珍しく湿り気のない爽やかな風が吹いて街路樹を揺らした。

「日向さーん」
誰かが俺を呼んでいる。
この声はタケシだろうか?
そろそろ行かなくては。

「俺、そろそろ戻んねーと」
「ああ。そうだな。」
「じゃあ。」
「待て、日向。」
呼び止められて歩を止める。
すると松山は学生服のポケットの中から白い布のようなものを取り出した。
「これ、つけてくれ。」
「・・・・・・・・・・これって」
「ハチマキだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
はい?
「誕生日おめでとう。日向。」
「え?あ、ああ。よく知ってるな。」
「これ、プレゼント。決勝戦で是非つけて欲しいんだ。」
「って、お前がさっきまでつけてたやつか?」
「違う。これは俺がお前のために作ったんだ。よく見ろ。」
と、ハチマキを突きつけられる。
片側の隅には背番号と同じ10の刺繍が。
そして反対側の隅には布と同じ白い糸で・・・
「I LOVE YOU HIKARU・・・」
「な!!」
な!!じゃねえだろ!!!!
「ちなみに俺のは I LOVE YOU YOSHIKO だ。」
って、それは一種の自慢か?!!おい!!!
「これをつけて決勝に出ろと?」
「ああ!」
いや、それ、めっちゃ微妙だろ・・・
そんな気持ちを思いっきり顔に出しているというのに、松山は笑顔で追い討ちをかけた。
「みんなの分もあるんだ!!」

ガサっ

ぎゃーーーーーー!!!
どっからともなくいっぱい出てきたーーーー!!!!

「監督の分もあるぞ!」
「お、おま・・・全員でこれをつけろと言うのか?!」
「ああ!」
いやいやいやいやいやいや。
おかしいだろ!!明らかに二番煎じもいいとこだろ!!
つうか、ふらのと違ってうちのチーム、そういう爽やかさ売りにしてねえから!!全然!!!!
「松山・・・お前一体何を考えて・・・」
「何って、お前が好きだからに決まってるだろ?」
「はあ?!」
「だから、I LOVE YOU って。」
「おおおおおお、落ち着け松山!!」
「落ち着くのはお前の方だろ日向。とにかく、これつけて決勝戦がんばれよ!」
じゃあな!!!!と、颯爽と松山は去っていったのであった・・・・。







「という、夢を見たんだが。」
「・・・・・・死んじまえ。」

プツっ  ツーツーツーツー・・・

切られた・・・。
夢の話は本当なんだが、やはり内容が気に食わなかったか・・・。



そんな日向さんのもとに、松山からのハッピーバースデーメールが届くようになるのは
まだまだ先の数年後のお話。

(完)

                  


あっという間に書いた短編でした。
バースデーネタはお約束の夢オチです。
おバカな松山も結構スキvv

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