*この作品は「ナツヤスミ」の数年後という設定です。
 これだけでも読めますが、できれば先に「ナツヤスミ」を読んでくださいねv




時刻はもうすぐ17時。
ちょうど夕暮れ時で、沈む夕日が海を真っ赤に染めていた。
それはまるで写真か絵葉書のようで。
うーん。なんて贅沢なんだ。
この光景を独り占めしながら、露天風呂にゆったり浸かれるだなんて!!!
俺は思わず「むは〜〜vv」とオッサンのような息をついた。
「松山ー。そろそろ夕飯だよー。」
「あ、うん。」
そして三杉の声にようやく随分と長風呂してしまったのだと気づく。

ここは伊豆の某所にある三杉んちの別荘。
数年前の夏休みに一度訪れたことがある。
今回はなりゆきで俺一人だけど、その時は南葛組や東邦組と思いっきり海水浴を楽しんだ。
まだ中学生だったからとにかく遊ぶのに夢中で、
今みたいに露天風呂を堪能するなんていう情緒的なことは欠片も思いつかなかった。
ちなみに・・・・
そん時色々あった日向とは・・・・まあ、今も、なんとなくそんなよーな、そうでもないよーな、
お互いそこんとこは触れないままに微妙な友人関係となっていたりする。(どうすんだろ・・・)

「あんまり長いからお風呂でのぼせてるんじゃないかと思ったよ。」
用意されていた浴衣(なんで浴衣なんだろ???)を着てダイニングに戻ると
同じく浴衣姿の三杉がテーブルに皿を並べていた。
「悪ぃ。夕陽がめっちゃくちゃきれいでさ。沈むまでずっと見てたんだ。」
そう言うと、きょとんとした顔をされて
「君もそんなことを言う年になったんだ。」
とか言われてしまった。
って、親戚のおっちゃんかよ・・・

夕食は三杉がいつも利用する、何とかホテルのケータリングだそうで。
俺が風呂を堪能している間に届けられていて、リビングのテーブルの上にはすでに料理が並んでいる。
イタリアン?フレンチ?と三杉に尋ねたら、創作和食って答えられた。
これって和食なのか。そうなのか。
何か手伝おうかと思ったけどやることもなさそうで、やったところで三杉の邪魔になりそうな気がして、
俺は濡れた髪をタオルでがしがし拭きながら少し悩んだ末結局大人しく椅子に座った。
慣れた手つきでランチョンマットを敷かれ、その上にグラスが置かれる。
一度キッチンに消えた三杉が再び戻ってきたその手には・・・ワインボトル???
「三杉、それって」
「白ワイン。和食だし、白が合うかなって思って。」
これまた慣れた手つきでボトルのコルクを抜く。
ワインについては詳しくないけど、三杉が出してくる物だからきっと高いに違いない。
「フルーティーで飲みやすいと思うよ。」
「っつか、俺らまだ未成年・・・」
「まあ、いいじゃない。」
にこっと笑顔で返される。
や、俺は別にいいんだけど(正月とか親父に飲まされてるし。)三杉から酒を出すとは・・・。
いつも怒られている立場の俺としては、あとで何かありはしないかと少々勘ぐってしまう。
「乾杯。」
「・・・・乾杯。」
グラスを合わすとガラスのいい音が部屋に響いた。
ワインは実は飲むのは初めてだったんだけど、三杉の言うとおりフルーティーで、
これまで飲んだことのあるどの酒よりも美味いと思った。
「どうだい?」
「美味しい。ハマりそう。」
「そう。それは良かった。」
三杉はよく飲むのかな・・・?

料理も当然美味しくて、いい感じで酒もすすんでしまった。
思えば三杉と二人きりで話すことなんてこれまでほとんどなくて、
しかもサッカー以外の話・・・学校のこととか、家族のこととか・・・をするのも初めてだった。
言い方がおかしいかもしれないけれど、三杉はどこか現実離れしている存在というか・・・
顔が綺麗で、スタイルも良くて、お金持ちで、頭が良くて、それでいてサッカーも巧くて。
だから、合宿とかで寝食共にしていても、なぜか三杉の普段の生活というものがまるで想像できなかった。
でもこうして話してみると、割と普通なんだなって思ったりする。
こんな面白い先生がいるだとか、他人の色恋沙汰だとか,、そんな他愛もない話までしてくれた。
三杉の彼女のことを聞いてみたら、うまーい具合にはぐらかされちまったけど。(何でだ・・・)

食事を終え、リビングのソファに移動すると、三杉がまた別の酒瓶を持ってきた。
もう一方の手にはガラス製のお猪口。
「この近くの酒屋さんで買ってきた、地酒の大吟醸。」
「へえ。」
「松山、こっちの方が好きだろう?」
「うん。でもさっきのワインもマジうまかったけど。」
「おひとつどうぞ。」
「あ、はい、どうも・・・」
手渡されたお猪口は薄いブルーで、三杉が丁寧に吟醸酒を注いでくれる。
鼻に近付けて匂ってみると、先ほどのワインとは全然違う、いかにも酒!という香りがした。
口に運ぶと辛口だけどすっきり爽やかな味わいで俺好み。
「さっきはフルーティーだったから、今度は辛口にしたみたんだ。」
にこっと微笑んでそういう三杉は酒が入っているせいかほんのり頬を赤く染めていて、
なんとゆーか、らしくないほどに可愛らしい。
「三杉が俺の嫁さんだったら100点満点の酒チョイスだな。」
思ったことを素直に言ったら、「だから松山は。」って言われてしまった。
・・・だからって、何なんだ???
「だいたい君さ」
三杉はぐいっと酒を飲み干して俺の顔を見た。
「前にここに来た時、日向と何かあったろ?」
「え?!!」
突然そんなことを言われて、びっくりしてお猪口を落っことしそうになった。
っつか、何の脈絡もなかっただろ?!!今!!
「あれ以来、君も日向も、なんか大人になったよね?急に。」
ふふふふ、と妙な笑いを零しながら、空になったお猪口に酒をなみなみと注ぐ。
「ま、それはいいんだけど。」
「・・・・・・・・」
下手のことを言うと色々つっこまれそうだし、
それ以前に何を言っていいのかわからなかったので黙って酒を呷った。
隣に座る三杉は妙な笑みを浮かべたまま、俺よりもずっと早いペースで吟醸酒を飲み続けている。
酒強かったんだ。知らなかった。
それにしても・・・
こわいなあ、三杉・・・。
ホント、何もかも見透かされていそうで、悪いことできねえ・・・。(もう遅いけど。)
「で。なんで、日向なわけ?」
「へ?」
これまた突拍子もない質問を浴びせられ、当然何も答えられずひたすら目線を逸らし続ける俺。
ああ、もう何だよこの罰ゲーム!!俺なんもしてないのにーっっ
膝の上に置かれた左手の握りこぶしは、ドキドキのあまり震えっぱなし。
なんか、もう、どうせバレてるんだろうから言っちまおうかな。
ええ、そうです。あん時、俺と日向はヤりましたって。
くすっと三杉の笑い声が聞こえて、震える握りこぶしの上に手を置かれた。
「ホント、なんで日向なわけ??」
「え?ちょ・・・み、三杉???」
少しだけ熱い三杉の掌。
心臓の音が、そのままダイレクトに伝わってしまいそうな気がした。
気づけば、三杉の顔が、あと数センチまで迫ってきている。
わずかな酒の匂いに混じって、ふんわり漂う石鹸のいい香り・・・
浴衣の合わせからちらりと見えるきめ細やかな肌は桜色で、亜麻色の髪が俺の額をくすぐった。

「松山・・・」
右手に持っていたガラス製のお猪口はいつの間にか毛足の長い絨毯に落としている。
あっという間にソファの上に押し倒される格好になって。

こ、これは・・・・

誘われて、いる?
え?三杉に???
もうすでに酒のせいにしてしまいたいぐらいに理性が吹っ飛びそうなんだけど・・・
たとえ男とはいえ、そして三杉とはいえ、こんなに奇麗な浴衣美人に誘われて断れという方が無理な話だ。
これは不可抗力だ。違いねぇ。うん。
きっと日向も許してくれるはず・・・・
って、俺は日向と付き合ってんのか?!
しかも俺日向とする時はされる側なのに、今はする側にまわろうとしてんだけど!
そんな俺ってどうよ?!どうなのよ!!!

とか、そんな自問自答を3秒ぐらいで考えてたら
「松山って集中力に欠けるよね。」
と怒られてしまった・・・・
そんでもって
「集中力に欠けると言えば、この前合宿中に大学生とやった練習試合のときにPKとられただろ?あれは・・・」
ってこの体勢でこの状況で説教かーーー?!!

もう、なんだかわけがわからないよ・・・
しかも3分くらい一気にしゃべり倒して、いきなり寝たよ三杉・・・・

酔っ払ってたのか。そうなのか。

顔に出ない酔っ払いって本当に怖いなあ・・・。
三杉を起こさないようにゆっくりと起き上がり、お姫様抱っこで持ち上げた。
軽・・・・
そうだよな。ほせーもんな。三杉。
こんなに細い体で、あんなにパワフルに動いてんだよな。

ドアを開け、暗い部屋に入った。
ベッドにそっと三杉を寝かせる。
何事もなかったように、すーすーと寝息をたてている三杉。
やっぱり美人(?)だなあ・・・って思って、思わずキスのひとつでもしたくなったけど、
いきなり目ぇ開いたら怖ぇと思ってやめた。
すっげーありえそうだし。

「おやすみ。」
小さな声でつぶやき、俺は部屋をあとにした。





******三杉先生の酔っ払い傾向******

・基本酒には弱い
・酔っ払っても顔には出ない
・色気3割増
・爆弾発言をする
・限度を超えると寝る
・翌日まるで覚えていない

泥酔シリーズ三杉編でした。
とにかく色気がUPします。(笑)
さんざん爆弾落っことして、説教たれて、次の日覚えてません。
こいつは迷惑だぜ!!!
今回松山は攻めってことで。
基本松山は受けなんですが、三杉先生相手は特例で攻めアリです。

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