「ねえねえ松山っ 今のシュート見てた?」
「見てたよ。」
「見てた見てた?」
「見てたって言ってんだろっ」
「すげー カッコ良かったっしょ?」
「はいはい」
ため息交じりに言ってやった割に、反町は嬉しそうに笑顔を見せる。
代表メンバーの中ではクールでイケメン、
でもファンサービスは忘れないというモテ男キャラとして世の中的には認識されている反町。
こんなにガキだなんて、誰も信じないんだろうな…
それは、いつだったか… 2〜3年前の、今と同じようなトレーニングキャンプ中。
たまたま洗面所で二人きりになって、そしたらいきなり
「俺さ〜 松山の事、好きなんだよね。」
「はあ。そりゃ、どーも。」
「あれ?本気にしてない?」
「本気って」
「だから。好きって、あれだぜ?恋愛の意味の好きな?」
まさかの告白。
その頃、反町は初めてU−18に召集されて、俺は奴を『東邦のFWの人』くらいにしか思っていなかった。
まともにしゃべった事もほとんどなくて、正直、コイツ何言ってんだ??って感じで。
「ま。いきなり言われても困るだろーけど。」
「困るっつか、意味分かんない…」
「いい、いい。俺、これから頑張るから。」
ヨロシク、と肩を叩かれ、俺はポカンとアホ面のまま。
一体、アイツは何をどう頑張る気なんだ… と、思っていたわけだけど。
「松山、好きだよ。」
試合や練習やミーティング中以外の、飯食ってる時とか風呂とか休憩中とか…
人がいようがいまいがお構いなしに、反町はすぐそんなことばかり言ってくる。
初めのうちは、からかってくる奴とか引く奴もいたけど、あまりに頻繁過ぎて今では全員がスルーだ。
既に「また言ってるぜ〜」すらない。
「刷り込みって、やつだな。」
風呂上がり、ロビーにある自販機の前で飲み物を買おうと思っていたら、後ろにいた若島津が言った。
さっきまで反町もいたんだけど、やたら俺の肩に手を回したりして「好き〜」を連発して、
そして一人満足して帰ってしまったところだった。
「刷り込み???って?」
「好きって言われて、嫌な気持ちになる奴はいないだろう?
好き好き好き好き好きっ好き〜♪と言われ続けたら、なんか、いいかな?って思えるようになるのでは?」
そのまま若島津は一●さんの歌を歌い続ける。(古!)
それからコーラのボタンを押して、下から取り出した。
「思わねえよ。」
「だが反町はとてもいい奴だし、顔も男前だし、悪い話では」
「分かった。お前、反町に頼まれたんだろ。」
そう言うと、若島津は顔色一つ変えずに「そうじゃない」と答える。
「じゃ、なんだよ」
「さっき後ろから見ていたが、松山もそんなに嫌がっているようには見えなかったからだ。」
「………」
くそう…
痛い所をついてきやがるぜ。
確かに若島津の言う通り、反町はいい奴で男の俺から見ても男前で、代表チームの中で一番ファンが多い。
そんな奴にド直球に好意を寄せられたら… そりゃ、なあ?
「その感じだと、図星か?」
「?!!ち、ちがっっ」
「まあ。いいじゃないか。この際性別は忘れて、素直に受け入れろ。」
性別忘れてって、そこ一番忘れちゃならないところだろーが…
「ちなみに俺も、今必死で刷り込み中だ。」
「え?」
若島津はさっき買ったコーラを見せてくる。
コーラ… って、ことは…
「…日向?」
「秘密だぞ。」
なんだ?東邦はホモばっかりか?
飲み物を買って部屋に戻ると、今回ルームメイトの新田はいなくて、代わりに
「やっほ〜☆」
「…なんで」
なぜか反町がいた。
新田の方のベッドに座って、新田の持ってきた雑誌を見ていたようだった。
「たまたまだよ。遊びに来たら、ちょうど新田が風呂行くところだったんだ。」
「ふーん」
俺は自分の方のベッドに座り、買ってきたスポーツドリンクの蓋を開け口に運ぶ。
「ね。一口ちょーだい。」
「はい。」
何も考えずに差し出すと、反町は一瞬びっくりしたような顔で俺を見て、ペットボトルを受け取った。
「嫌じゃないの?」
「何が?」
「間接キスだよ?」
「そんなの、別にお前とじゃなくたってしてるだろ。俺そこまで潔癖じゃねーし。」
反町は肩をすくめて「まあね」と言い、一口飲んだ。
「なあ反町」
「ん?」
「お前さ、俺の事、好き好き言ってるけどさ」
「うん」
「本当に好きなのか?」
「……」
別に、嘘をついてるとは思ってないけど、なんつーか、言われ過ぎてもう…
そんな事を思っていたら、反町はじっと俺の顔を見つめて。
その顔が、すごく、真剣で…
「いや… その、疑ってるわけじゃねーけど… ほら、俺達って男同士だし」
「好きだよ」
「っ…」
「どうして分からないのかなあ?性別なんて関係ないって思っちゃうくらい好きだってことだろ?」
「…そ… それは、どうも…」
「じゃあ、俺も聞くけど。」
反町は立ち上がるとペットボトルをサイドテーブルに置き、俺の横に腰を下ろした。
「っ… な、なに」
「そんなこと言う割に、松山が全力で嫌がったり、俺の事避けたり気持ち悪がったりしないのはなーんで?」
「//////」
先ほどの若島津同様、痛い所をつかれて俺は思わず黙り込んだ。
「キス、してもいい?」
「?!! なんだよ急に!!ちょっ 調子乗るな!!」
「いいじゃん。ファーストキスじゃないんだろ?ふらののマネージャーだった?」
「…どーしてそれを///」
「俺、情報通だからw」
「……」
絶対小田だ…
アイツめ〜っ あとで覚えてろよ〜〜っっ
だいたい、あれは事故みたいなもんで
「だから、試しに一回キスさせてよ。そしたら、俺がどれくらい本気かって分かるから。」
「?!」
ちちちち 近い!!
近い反町!!
いつの間にやら腰に手がまわってきて、顔がものすごく近い位置にある。
「ちょっとだけ… だから…」
「んっ///」
俺の返事も、反応も待つことなく、反町の唇は俺の唇を塞いだ。
柔らかくて、温かい唇…
あの時の事故みたいなキスとは大違いの本気のキスに、反町の言うとおり、
その気持ちも覚悟も思い知らされたような気がして。
「はあ…」
唇が離れると、近いままの反町の顔が見えた。
潤んだ目に、シャープな鼻筋…
何か言わなくてはと思っても言葉が出ず、またすぐに、唇を塞がれた。
今度はそのまま体重をかけられて、身体が包み込まれるように、ゆっくりゆっくり、ベッドに沈んでいく。
反町の体の重みも、体温も、すごく気持ちが良くて…
「あっ///」
耳から首筋にかけてキスをされて、全身の肌が粟立つ。
体の芯が熱くなり、蕩けてしまいそうだ…
「好きだよ」
耳元で反町が囁く。
「…うん」
「信じてくれる?」
「……うん」
ああ… 俺は今、何もかもがどーでもよくなっている。
反町が男だとか、今はトレーニングキャンプ中だとか、ここは宿舎だとか、新田が戻って来るかもとか、
全てが、どーでもいいと…
「松山」
「なに?」
「俺、ちょっとヤバイかも」
「なにが?」
「勃っちゃった」
「……」
腿のあたりに感じる、熱いモノ。
勃っちゃったって…
なっ ななななななっっ///
「?!!!////// ぎゃーーー!!!」
ドッシーンっっ
「いでーーーっ」
びっくりした俺は、思わず反町を突き飛ばしついでに奴のナニを蹴りあげてしまった。
「ぐおおおっ」
反町は床の上で股間を抑えてうずくまっている。
あわわわ…
ご、ごめん…反町…
「悪ぃ… つい」
「ひっ ひどいよ松山っ」
反町はようやく立ち上がり、ぴょんぴょんジャンプをした。
「大丈夫か?」
「なんとか」
「ごめんな。」
「…いいよ。キスさせてもらったし。」
目線を逸らして少し照れくさそうに、反町は言った。
キスさせてもらった、なんて、一方的にしてきたくせに。
ちょっとだけって言ったのに、すげーガチだったし。
それにだいたい… あんなに気持ちいいなんて反則だろ…
「まっつやまさーーん!!三杉さんがアイス買って来てくれましたよ〜っ」
すごい勢いでドアが開いて、アイスを持った新田が入ってきた。
「あ。反町さんまだいたんだ。」
「俺の分は?」
「誰かが部屋に持っていってくれてると思いますよ?」
「じゃー戻ろうかな。またね松山。」
突然クールにそう言って、反町は部屋を出て行ってしまった。
…なんだよ…
俺、すげー振り回された気分なんだけど…
若島津の言うとおり、刷り込みが成功してしまったんだろうか?
「はい。松山さんの分w」
「おう。サンキュー」
受け取ったアイスの袋を開け一口食べると、爽やかなソーダ味が口いっぱいに広がった。
(完)
特に理由もなく、反×松です。
たまたまテレビで見た、長●と本●の会話がキュンvだったので(笑)
長●がシュートして、長「見てた?今の見てた?」本「見てた言うとるやろ」長「すごかっただろ〜」
って感じで。
ガキな長●と超クールな本●。
ま、仲良しなんでしょうけどね〜w かわいかったでーす。