その昔、冬はもっと寒くて、静かだった。

学校からの帰り道、俺と松山はいつも一緒で。
最初は5、6人でいるんだけど、家が離れていた俺たちは道の途中から二人だけになった.。
今日あった出来事や先生の悪口なんかは大人数の時に話して、
二人きりになってからは大抵サッカーのことばかり話したけど。

たまには好きな女の子の話をしたり。
たまには「絶対に秘密」の話をしたり。
……たまには、喧嘩もしたり。
でもそんな時松山は必ず「今のは無し!」と言って笑ってくれた。
俺の、頑固な性格を知ってくれていたから。

振り返れば、小さな白い細長い路地に、二人分の足跡がどこまでも続いていた。



「小田!」
久しぶりの松山は相変わらずの笑顔で俺に駆け寄ってきてくれた。
「代表初召集、おめでと。」
「ケガ人の代打だけどね。」
「何言ってんだ。」
松山は少し怒った顔で、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「そうだったとしても、お前が呼ばれたんだ。自信持てよ。」
「・・・ああ。」

いつの間にか、松山の隣を走るのは俺じゃなくなっていた。
それは、日向であり翼であり三杉であり・・・
松山の背中が、どんどん遠くなるような気がした。
手の届かない存在になってしまった気がした。

気がつけば俺たちは「俺たち」でなく、「俺と松山」になっていた。

「俺、これからジョギング行くけど、小田も来るか?」
「・・・・・・」
「小田?どうかしたのか?」
「・・・うん。なんか、松山は変わんねーなって思って。」
「え?」
「いつも俺のこと励ましてくれてさ。監督に怒られて行き詰ってる時も、
 『昨日より今日の方がうまくなってる。明日は今日よりうまくなるぞ。』って。」

そうだ。
松山の言ったその言葉が、どんな時も俺を勇気づけてくれた。

『昨日より今日はもっと 今日よりも明日はもっと』

「だって、本当の事だったから。」
さらりとそう答える松山には本当に敵わないと思う。
そして心から大好きだと思う。
「ジョギング、俺も付き合うよ。」
「おう。行こうぜ。」
「俺、絶対残って、本メンバーになるから。」
「お。その意気その意気。」


時間はとどまってはくれない。
幼い頃から青春時代を経て現在に至るまで
俺と松山の間に刻まれた時間は、これからも変わらず刻み込まれていく。


昔よりも少し暖かい冬の日の道。
肩を並べて走り出した松山の横顔。

「俺たち」はもう一度、同じ光に向かって走り出した。



end



季節はずれ!!!(今5月。)
「これは完全に松山&小田ソングだ!」と勝手に決めていた歌で
ついにお話を書いてしまいました・・・。
ユウスケさん、ゴメンネ!!!(逃っ)
そしてかなり一方的にユウスケさんに捧げます☆
ちなみに LOVE に置いてある「冬のうた」も同じアーティスト様が元ネタです。

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