「で、原因はなんだったわけ?」
「だから。俺は目玉焼きはソースって決めてるのに、日向が勝手に醤油をかけて」
「・・・・・・」


全日本の合宿で松山と同室になるのはそれほど珍しいことじゃない。
あいうえお順で部屋割りをすれば「ま」と「み」なんだから、当然一緒になることは多い。
逆に言えば「ひ」と「ま」で松山と小次郎が一緒になることも多いわけで。
そんな時はいつも、『なんで「ふ」「へ」「ほ」がいないんだーーー!!!』と文句を言っている。

先に食事を終えた僕が部屋でくつろいでいると、ぎゃーぎゃー騒ぎながら松山が帰ってきた。
明らかに頬には殴られた痕があって、しばらく枕に八つ当たり。
ようやく落ち着いてきたようなのでベッドに腰掛けていた僕の隣に座らせて、だいたいの見当はつきつつも話を聞いてあげることにした。

「だいたいさ、なんでわざわざ小次郎の隣に座るの?」
「他に空いてなかったんだ。」
・・・・・絶対ウソだ・・・。
松山も小次郎も、本当にイヤだったら時間をずらすなり、席を替わってもらうなりすればいいんだ。
結局二人はなんだかんだ言ってくっつきたいに決まっている。
しかも本人達には自覚がないんだから、余計に始末が悪いったらない。
なんだか二人の痴話喧嘩にいつも付き合わされてるみたいな気がしてならない。
僕だけじゃなく、若島津なんかもたぶん同じこと思ってるのだろうけど・・・。
「・・・・・でも、松山、小次郎のこと好きなんでしょ?」
頭にきたから、ちょっといじわる言ってみた。
「好きじゃねえ!大ッキライだ!!!」
って、予想通りの答え。
それから松山はぶらぶらさせていた足をベッドの上にあげ、あぐらをかいた。
「なんで俺が日向のことなんか好きなんだよ。岬の方がずっとずーーーーっと好きだっ」


ふいに松山の肘の擦り傷に気づいた。
結構大きな傷。
松山、痛くないんだろうか・・・
「松山、肘、血が出てる。」
「え?あ、本当だ。テーブルで打ったやつかな。」
松山は腕をのぞきこんだ。
「救急箱借りてこようか?」
「こんなの舐めときゃ治る。」
ぺろっと赤い舌を出して傷口を舐める。
・・・子供みたいな仕草。
チームメイトからはサッカーにおいてもそれ以外においても随分頼られる存在だけど、僕にとってはやっぱりかわいい幼なじみだ。
「・・・・松山」
「ん?」
だから、さ・・・
「唇からも血が出てるよ。」
形の整った唇の端を軽く舐めると、松山は目を丸くして頬を赤らめた。
今度ははっきりキスと分かるように唇を重ねる。
松山は動かなくて、驚いたことに目を閉じていた。

もう少し大人になったら、松山はきっと自分の本当の気持ちに気づくんだろう。
その時は、僕もちゃんと受け入れて応援する心づもりはある。
だから、それまでは。
もうしばらく、いいよね?小次郎?

顔を離すと、松山はゆっくりと目を開けて僕を見つめた。
「他に血が出てるところは?」
「・・・・・・・・・口ん中。」


僕はもう一度、松山にキスをした。

急に書きたくなった岬×松短編。
マツコジクリスマス甘々話書くつもりがいきづまりました・・・(汗)
ちょっとヤキモチやくみさっくん。
今回は裏ボスというよりはオカンなみさっくんでしたね。
設定は中学生くらい・・・かな?
やはり二人はキス止まりがちょうどいいのvv

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