ま、負けた・・・。
この俺様が負けるとは。
しかもこんなに大人数いるのに!!
俺はあっという間に目隠しをされる。
これがナイスバデーなお姉ちゃんなら文句も言わないが、(そんな趣味が・・・?)
残念ながら汗臭いヤローばっかりだから救いようが無い。
「はい、じゃあみんなで数えましょーーー!!」
反町のやけに楽しそうな声が背後から聞こえる。・・・腹立つ。
反町の号令で「1、2、3・・・」とみんなが数え出し、俺は焼け付く砂の上でぐるぐると回転させられる。
おいおい、一体どんだけ回す気だ!!もういいんじゃねえのか?!
「それじゃーお願いします!!」
くっそー。やっぱ反町、絶対必要以上に楽しんでやがる・・・。帰ったらただじゃおかねえぞ。
俺はもたもたと歩き始めた。
さっき手に持たされた竹刀は、思った以上に俺の手にフィットしている。
これならヒットすればパッコーンとまっぷたつに違いねえ。
ジャンケンに負けたのは悔しいが、俺も男だ。
割ってやろうじゃねえか!!!
スイカをよお!!!!
「右、右!あ、違う!もっと前っ あははは おーい、カニいたよー。あ、左! 志村後ろ!! 貧乏人〜 そのままそのままっ!」
いろんな奴の、いろんな声が聞こえてくる。
どれを信じたらいいんだ?
ってか、関係ねえこととか、どさくさにまぎれて俺の悪口言ってる奴いねえか?!
「日向さん!もっと右です!!」
タケシ・・・。やはり信じられるのはお前だろう。
「右、右!上下△で必殺技出ますよ!」
反町テメぇ・・・。やはりシメル。決定。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・なんか言え!若島津!!!
「もっと前だって言ってるだろう?!(怒)」
三杉・・・。お前、さっきまでサングラスかけて上着着て「紫外線が強いね。」とかすかしてたくせに。
突然本気モードで怒鳴ってんじゃねえよっ
「あははは。なんかマヌケだよねー。小次郎ってば。」
俺はお前が天使だなんて信じない・・・。ブラック岬・・・。
「本当だね。それより岬君、今度の日曜って暇?」
翼、いつかヤる・・・・。
「あ!葵〜っ こっちにヤドカリ発見!」
「本当だ!おーい!佐野〜っ」
参加しろ!年下組!!小学生かてめえらっ!!
「ヤドカリっタイ。」
って、お前もか!次藤!!
「ばーか ばーか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この声は・・・・・・・
「松山!!!てめえ!!どさくさにまぎれて悪口言ってんじゃねえぞ!!!」
「 日向さんの振り下ろした竹刀は、松山さんの額をかすめました。
危ないところでしたが、松山さんは無事でした。
怒った松山さんが、竹刀を膝でボッキリまっぷたつに折りました。
それから、いつものように喧嘩が始まりました。
悪気はなかったんです。すみません。 」
ガムテープでとりあえず元の形に戻された竹刀と、謝罪の書かれたメモが、
タケシの手により合宿所の賀茂監督の部屋にそっと置かれた。
そんな全日本ユース夏合宿の最終日。 |