松山が、三杉と付き合っていると知ったのは半年くらい前だった。
真夏のトレーニングキャンプで、クソ暑ぃっつーのになんかベタベタしてやがって。
二人が醸し出す空気がこれまでとは違うと、気付いていたのは当然俺だけじゃない。
「…なんでしょうね。あの二人。」
「うん?」
「日向さんも、そう思うでしょ?」
ストレッチで組んだ反町が背中を押しながら、こそこそと耳打ちしてきた。
「できてるとか?」
「…まさか。」
ねえだろ、と言うと、反町は「ふーん」とかなんとか言って
「俺、分かるんですよね。そーゆーの。本人達に自覚があるかどうかは別として。」
「……」
ああ。それなら分かるような気がする。
中学の頃、俺と若島津ができてんじゃねーかって噂が流れたらしい。
その話を聞いた時にはすっかりそんな噂は消えていて、ほぼ笑い話になっていた。
思い返せば俺も若島津も他と混ざろうとせず、二人でばかり行動していたからな…
家族や兄弟以上にお互いに気を許しあっているから、そう思われても仕方なかったのかもしれない。
「ま。あの二人なら女子も喜びそうですけどね〜」
キレイだし、と反町は言ったが、あまりピンとこなかった。その時は。
けど。
今なら、分かるような気もする。

今年度ラスト、そして高校生活ラストのトレーニングキャンプは松山と同室だった。
三杉はコーチ扱いで一人部屋…のはずだが。
「おい、松山」
「うん?」
「お前、三杉んとこ行かなくていいのか?」
「なんで」
「なんでって…」
滅多に会えないんだろうし、せっかく向こうは一人部屋なんだし。
風呂上がり、床でストレッチする松山を、ベッドの上から眺めながら話を続ける。
「できてんだろ?」
「…」
前屈しながら、顔だけをこちらに向けてくる。
「…まあ」
「みんな気付いてると思うぞ。」
「……うん」
窺うような目線をこちらに向けてくるので、俺は仕方なくフォローを入れてやった。
「あー… 俺は、男子校だから、別にそういうことに関しては… なんつーか、慣れてるっつーか…
 特に偏見とかは持ってねえつもりだけどよ。」
他は知らねえけどな、と付け加えると、松山は小さく笑って「ありがと」と言った。
「喧嘩でもしたのか?」
「…喧嘩… とは、違うかな」
松山は立ち上がり、何故か俺の寝転ぶベッドの足元の方に座った。
俺が身体を起こすと、「なあ」と言いながら更に近づいてきて。
「男同士って、やっぱ、ダメなのかな」
「…お前が言うなよ」
「……」
これは、別れ話でもされたかな…
20歳越えてりゃ、まあまあ酒でも飲もうぜ、なんて言ってやれるんだが。
「三杉とは、何もなかった」
「え…」
「お互い、好きって気持ちはあったと思う。
 会えなくても、メールしたり電話したりすれば楽しかった。
 けど… それ以上は、本当に、何も、なくて…」
それは、どっちが男役でどっちが女役とかもなく、それどころか、キスすらなかったという事だろうか?
でも、そういう付き合い方だって、まして男同士ならありえるんじゃないのか?
「なくたって、別に」
「俺は、嫌だった。」
松山の手が、俺の腿の上に置かれる。
目線は斜め下のまま… どこも見てはいない。
その手の上に、俺は自分の手を重ねた。
「俺、本当に三杉の事、好きだったのかな…」
「…さあな」
「何もないからって気持ちが冷めるのは、違ったってことなのかな…」
「だから、俺に聞くな」
松山は、俺を誘っているんだろう。
腿に置かれた手は、ジャージの布越しでも充分きわどい。
三杉なんかのために、俺を利用するな。
確かめるために、俺を使うな。
俺は腿に置かれた手を弾くと、松山の身体を引き寄せた。
「っ…」
「見くびるなよ」
「ひゅ…」
押し倒しながら唇を塞ぐ。
そっちがそのつもりなら、俺は…
お前の気持ちも三杉の気持ちも自分自身の気持ちすらも全部無視して
「刻みつけてやるよ。お前の身体に」
「っ…」
「その後、勝手に確かめるなり後悔するなりしろよ。」
「あっ…///」
首筋に噛みつき、Tシャツの中に手を入れる。
「日向っ… やっ 」
「……」

ゆるい抵抗も、下半身が繋がる頃にはなくなっていた。
松山も、俺も… 全てを忘れて、激しくキスを交わしてお互いを求め合って。

裸のまま、俺の隣で眠る松山は、明日の朝何を思うのだろう?
奴の髪をそっと撫で、俺も静かに目を閉じた。



(完)



一杯飲んで、勢いで書いてみた。
そして読み直しもせずに勢いでUPしちゃうw
ギリ表で良しとする!!

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