*時間軸が色々とびます。わかりにくくてスミマセン…



「…は?」
「だから。男同士ってどうやんだ?って聞いてる。」
「………」
片山は思わず目が点になってしまう。
たぶん、そうだとは思うが。
でも相手が相手だから一応、確認しておいた方がいいと思う。うん。そうしよ。
「お前の言ってんのは、エッチなお話のことなのかな?」
「エッチなお話のことだ。」
クソ真面目な顔してそう言ったのは、他でもない、松山、である。



松山が東邦学園大学に入学してから数カ月。
イタリアにサッカー留学中の日向が、三日後に帰ってくるらしい。
同じマンションに住む松山、片山、反町の三人は現在片山宅で家飲み中。
反町がコンビニに買い出しに行っている最中に、このとんでもない(?)相談を持ちかけられた、のである。
「って、なんで俺に聞くんだよ。」
「他に聞けないからだろ。」
「…そらそーだ。」
至極まっとうなことを言われ、何も言い返せない…。
確かに松山の周りに男同士のカップルなんて他にいないんだろうから。
まあ、あんまりまともに答えても余計混乱するばかりだろうから(それもちょっと面白そうだが)
適当に答えておこう…と片山は缶ビールを一口飲んで話を始める。
「お前、女の子と経験は?」
「ない。」
「だよな。」
「悪かったな。」
日向とのアレがファーストキスだったんだから、そりゃ当たり前…
納得する片山に、そうとは知らずバカにされていると思った松山は睨みをきかせて怒る。
まあまあ、とそれを制して片山は会話を再開した。
「でも、なにかしらの情報で、エッチの仕方っくらいはわかってんだろ?」
「…まあ、なんとなく。一般常識の範囲内…くらいで。たぶん。」
「じゃ、大丈夫なんじゃねえの?」
「え?!大丈夫なのか?!!同じなのか?!!」
「…場所が違うだけでやることはだいたい一緒…」
「場所が違うって何だよ?!」
「あとは日向にまかせておけって。」
「まかせていいのか?」
「どうだろ。」
「無責任っっ」
なにやらキーキーしている松山がやたら面白くて、片山はつい揶揄いたくなってしまった。
「じゃ、俺が実践で教えてやろうかー?」
「は?!!」
「ほら。日向とする時困らないよーに。」
ニヤリと笑ってふちなしメガネをはずすと、松山の腕を掴み自分の方にぐいっと引き寄せる。
そして男女問わず有効、と噂の切れ長の目で松山を見据え、
「大地と最後にしてからだいぶ経つから溜まってんだよ。」
「な、何言って///」
「大丈夫。俺巧いから初めてでも痛くしないし。」
ふうっと耳に息を吹きかけると、松山の身体がびくんと震えた。
「ぎゃっっ///」
「なんつってー。」
あはははー と軽く笑って、腕を離した。
「な…な…///」
「あー。かわいいな、松山。」
ふいに背後に殺気を感じて振りかえるとそこには
「ちょっと片山。あと一歩で台所にある包丁取り出してたよ?」
ビニール袋片手に仁王立ちの反町さん。
「お帰りそりそりvそんなコワイこと言っちゃいやんv」
と、反町のモノマネで片山が返すと、酒やらお菓子やらでいっぱいのビニール袋が
片山の顔ギリギリのところをスイングした。
「冗談冗談。」
「片山の場合は冗談にならない。この色魔。」
「それはそうと松山。日向もバカじゃねえからちゃんとやり方調べてくると思うぜ?」
「え?何のやり方???」
首を傾げる反町に、松山はまた顔を真っ赤にして
「なななな何でもない!!!///お!ポテトチップスわさび醤油味!これ美味いよな!!」
必死の松山に、片山はまた笑いを堪えずにはいられない。


*************************


「イタリアにサッカー留学??」
「ああ。一応大学には進学するんだが。」
「俺、東邦の推薦、受かったぞ?」
「は?」
「…日向、イタリア行くのか?」
「…松山、東京に来るのか?」


*************************


時間を遡ること数ヶ月前。
それはものの見事にすれ違った二人ではあったが、松山が東京に引っ越してきたその日の真夜中。
これまたすごいタイミングで、翌日はイタリアに旅立つという日向が
ダンボールだらけでカーテンすらついていない松山の部屋に大荷物を抱えて押し掛けてきた。
「早朝空港に行くから今晩はここに泊る。」
「泊るったって、布団これしかないぞ…?」
まだベッドも買っていなくて、とりあえず持ってきた布団を引っ張り出して床に敷いて寝ていたわけだが。
日向は重たい荷物をドスンと下ろして、先ほどまで松山が寝ていた布団に潜り込んだ。
「来いよ。」
「…俺の布団だろーが。」
なにえらそーに言ってやがる、と文句を言いながらも松山は素直に日向の隣に収まった。
カーテンのない部屋は不自然に明るくて、位置的にありえないが誰かに見られているような気がして。
「狭い」
「我慢しろ。」
「だから、なんでお前がえらそーに言うんだ。」
「……松山」
「な、なんだよ…///」
「キスしても、いいか?」
「いちいち聞くなよっ///恥ずかしい奴だなっっ」
「いきなりしたら殴るだろ。」
「……別に… 殴ら ねーよ」
「…そうか」
その腰に手を添え、少しばかり引き寄せると唇を重ねた。
松山の身体が小さく震える。
(…熱い…)
戸惑いながらも答えるように日向の背中に手を回すと、それが合図だったかのように舌が入ってくる。
口内を侵されて、舌を絡め取られて…
初めてのディープキスは蕩けるほど熱く甘く、松山は気がおかしくなりそうだと思った。
「…ん… ふぅ///」
長いキスが終わって、とろんとした目で日向を見上げる。
すると日向は切ない顔で
「…お前… そんな顔すんなよ…」
「…へ?」
「ああっっ クソっっ やりてえ!!!」
どこかに向かって小さい声で叫んだ。
「な、何?」
「…やりてえけど、今日は、やめとく…」
イタリアに行く決心が鈍る、と日向は言う。
「…ひゅーが?」
「だから、その目ヤメロ。」
「なにがだよ。」
「次、帰る時はやる。」
「……」
言っている事が通じているのかいないのか、松山は何も言わず、日向の胸のあたりに顔を埋めた。
「…ひゅうがぁ…」
「…な んだ よ」
「お前、あんまり俺のこと、置いていくなよ」
「…え…」
「俺も頑張るけど、早く追いつくように頑張るけど…」
「…」
「お前の背中… 遠く な」
松山の言葉が途切れて、やがて規則正しい寝息に変わる。
「…サッカーのことかよ…」
小さく苦笑いして、松山の黒い髪にキスを落とす。
(置いてくなら浮気してやるとか、言うかと思ったじゃねーか。)


引っ越しで疲れたのか、松山は良く眠ってしまっていて。
数時間後に日向が目を覚ました時にもまるで起きる様子はなく、
日向は松山を起こすことなく、そのまま空港に向かったのだった。


*************************


「日向」
「…おう」
裸の●将みたいな日向と半年ぶりに再会し、
いつものメンバーに三杉も加わっての「祝v日向さん一時帰国vvv」飲み会。
当然盛り上がりまくる中、それでも飲み過ぎないようにだけ注意しておいて、
一次会が終わってみんなが二次会のカラオケに流れる中、反町がうまく帰らせてくれた。

主役がいなくなっていいんだろうか…?と横目で日向の顔を見ながら、松山は並んで夜道を歩く。
「良かったのか?最後までいなくて。」
「いいんじゃねーの。あいつら飲みてぇだけなんだから。」
日向は東邦組はもちろん、代表のメンバーにも、その表現は様々であっても随分慕われていると思う。
本人にあまり自覚がないのがたまに傷ではあるが。

他愛もない話をしながら、そのうち松山の住むマンションに到着した。
部屋に着いて、とりあえず風呂に入ることにする。
一応客だから、と先に日向を風呂に入らせた松山であるが、ベッドを目の前に松山は悩んでいた…
(…布団、敷いておくべき…なのか???)
客用の布団はあるにはあるが…
(う、うーん…???)
ああ!!ついでにそれも片山に聞いておけば良かった!!
いっそ今電話して聞いてみるか?!!
いや、今電話したら全員に聞かれてどえらいことになる可能性も…
「…何突っ立ってんだ?」
「ひゃ!!」
「…おめーは相変わらずリアクションが変わってんな。」
振り返ると日向はしっかり持参したTシャツ短パン姿で、タオルで髪をがしがし拭きながら立っていた。
「いや、ふ、布団、出そうかと思って。」
「…おう。悪ぃな。」
不自然な動きで押し入れから布団を取り出して敷くと、慌てて風呂場に向かった。

松山が出てきた時には日向はベッドの下に敷かれた客用の布団でゴロゴロしながらテレビを見ていた。
(ああ… なんか、俺ってば…///)
風呂に入りながらあれこれあれこれ、それはもう色々と妄想しちゃって、
いつも以上に念入りに(どことは聞かないでくれ。)身体を洗ってしまった、そんな俺です…(by 松山)
なのに、こいつの緊張感のなさときたら…
(もしかして、『次、帰る時にはやる』ってそのことじゃなかった…?!!)
なんだか急に力が抜けた松山は、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出した。
「さっき勝手にもらったぞ」
「あー うん。」
「もう寝るか?」
「ん。そーだな。」
飲み終わって空になったペットボトルを置き、狭いキッチンの電気を消した。
日向も部屋の電気を消すと、もそもそと布団に潜り込む。
その姿を横目で見ながら、ああ、やっぱこいつ、そーゆーつもりじゃなかったのか…と
がっかりしたような、でもどこかで安心したような…複雑な気持ちで、
松山は日向の上を跨ぐようにしてベッドに上がった。
「…なんでそっちで寝るんだ?」
「…へ?」
「わざわざ布団敷いたのに。」
「?」
片肘をついてこちらを見る日向に、松山は小首を傾げる。
「ベッド、狭いから布団敷いたんじゃねえの?」
「え?」
「だいたい、こんなパイプベッドじゃぶち壊れそうだし…」
…ぶち壊れる???
「ぁ…っ///」
日向の手が伸びて、短パンから伸びる松山の太股に直接触れる。
「…こっち来いよ… 松山」
「………」
心臓の音が、身体中に響いているような気がした。
松山は素直にベッドから下りて、日向の隣に潜り込む。
「…お前、緊張感なさすぎだろ…」
「バカ言うな。めちゃくちゃ緊張してる」
「ウソ、だ」
「心臓の音、聞こえないか?」
埋めた日向の胸に耳を当てると、自分のそれよりも速いかもしれない心臓の音が聞こえてきた。
「な。」
「…うん。」
「…っつか、いいか?」
「…いいよ。聞くなよ、いちいち。」
「聞かねーと殴るだろ?」
「…別に 殴らねーだろ…」
いつかこんな会話をしたな…なんて思い出していたが、
それもあっという間に日向の熱いキスで掻き消されていった。

(続く)


というわけで続きは裏館にて!!!
苦手な方はここまでにしてくださいねv
残すはただのエロですから…
ええ。バカップルの初エッチが待ってるだけですから…

たぶん、あんまりまともな初エッチを書いたことがないので、だいぶ恥ずかしいです。(笑)
こいつら完全にバカップルだしー。(お前が書いとんじゃ!)
2つ番外編書くつもりでしたが、おそらくこの1本のみになると思います。
「青春」本当のラストでございます〜


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