「うわあああああああ!!!!」
誰かの叫び声で、俺は叩き起こされた。
何だよ〜…
もうちょっと寝てたかったのにぃ…
そのうち廊下をドスドス走る音が聞こえて、隣の部屋のドアが勢いよく開く音が聞こえて。
「雪ーーー!!雪だぞ新田ーーーっ 滝も起きろって!!」
「マジ?!!積ってる?!」
「おー!!積ってる積ってる!!」
どうやら声の主は井沢らしい。
雪雪って、何をそんなに騒ぐことが…
「うるせえな…」
向こう側のベッドで寝ていた日向が目を覚ました。
「雪、積ってるって騒いでる。」
「ああ?雪??」
日向はベッドから抜け出て、カーテンを開けた。
「お。本当だ。寒…」
「雪なんか珍しくもなんともねえ。」
「そらお前は道民だからだろが。」
ああ寒い寒い、と、じいさんのように身体を擦りながら、日向はなぜか俺のベッドに潜り込んできやがった。
「な、なんだよっ あっち行け!」
「寒ぃんだもん」
「暖房つければいいだろ」
「人肌恋しいvv」
ぴと。と、わざとらしく身体を寄せてきて気持ちが悪かったので、力いっぱい突き飛ばしてやった。
ごてーーーんっ と床に転がる日向。満足。
バンバンバン!と、窓を叩く音が聞こえて、目をやるとそこにいたのは新田。
満面の笑みで、手には作った小さな雪うさぎがのっかっている。
…にしても、泥だらけだな、雪うさぎ…
積ってるったって、数センチにも満たないくらいっぽいもんな。
少ない雪をかき集めて作ったんだろう。
新田はゼスチャーで「窓を開けろ」とやっている。
俺は上着を羽織りベッドを抜け出すと、腰をさする日向の上を跨いで窓に近寄った。
窓を開けると、ひゅうっと冷たい風が流れ込んだ。
「松山さんっ 見て見て!!雪、積もってます!!」
「うん。積ってんな。」
「えええええ!!リアクション薄過ぎでしょ!!!」
「いやいや、リアクションでか過ぎでしょ…」
遠くに、異常にはしゃぐ修哲トリオが見える。
これまた少ない雪をかき集め、雪だるまを制作中っぽい。
そんでもって、携帯片手に向こうから走ってきたのは…
「まっつやま〜っっ」
ええ?!若林までぇ?!!
鼻と耳真っ赤にして、興奮した様子で駆け寄って来る。
「雪だよ雪!!」
今撮ったらしき携帯の写真を、俺にぐいぐい見せつけてくる。
雪景色と満面の笑みの若林って…ありえん!!
なんで記念撮影とかしてんの?!
「ああ!俺も携帯持ってきます!」
と言って、新田はダッシュで去って行った。
「若林はドイツで雪なんて見慣れてるんじゃないのか?」
「馬鹿だな。静岡で雪が積もったから貴重なんじゃないか。」
雪は滅多に降らない、とは聞くけど、そこまで珍しくて興奮するもんなんだろうか…
俺にはわかんねえよ…
ふと気配を感じたと思ったら、いつの間にやら日向が背後に立っていた。
「寒い」
「ぎゃ!!」
いきなり後ろから抱きしめられて、俺は思わず声をあげた。
「あ!おいこら日向、松山に変なことするんじゃ」
ガラガラ ピシャンっ
日向は手を伸ばして窓を閉め、鍵もかけた。
窓の向こう側で騒いでいるらしき若林を無視して、さらにカーテンまでひく。
「寒い寒い寒い寒い」
「黙れ!っつか離れろっ」
「あと腰打った。痛ぇ」
「知らんわ!!」
日向にぎゅうぎゅう抱きつかれて、朝から嫌な思いをするハメになった…
その日の夕刊の一面は、静岡市内に雪が降ったことだった。
夕飯時のニュースでも、レポーターが興奮しながらその様子を伝えていた。
「…変なの」
新聞を見ながら呟くと、横にいた岬が笑って言った。
「沖縄みたいにさ、ほぼ絶対に雪が降らないんだったら期待もしないんだろうけど、
滅多に降らないけどたまーに降ることもある…となると、なんだか期待しちゃうんじゃない?」
でもって、降った時の喜びも大きいんだよ、と続ける。
「…宝くじみたいなもん?」
「ああ。そうかもね。滅多に当たらないけど、当たることもあるんもんね。」
岬の説明に、なんか妙に納得してしまった。
「小次郎がたまに甘えてくるとドキドキしちゃう松山みたいな感じ?」
「は?!!な、何?!!」
にやにや笑いながら変なこと言ってきやがった。
全然うまく例えてねえし!!
っつか、岬がそんな笑い方しちゃダメだ!!!
「朝から抱きつかれてたんだって?」
「だっ… 誰に聞いたんだよっっ」
「若林君。」
わーかーばーやーしーーーっっ
もーーー 余計なこと吹き込むなよ!!
「ね。ドキドキしたの?」
「するわけねえだろ。気持ち悪かっただけだ。」
「ふーん。それにしても小次郎も思いきったことするよね。言う根性はないくせに。」
「?何が?」
「何でもない。」
岬は じゃね と談話室を出て行った。
やれやれ… と俺はため息をついた。
ふいに窓に目をやれば、また雪と戯れる南葛組が遠くに見える。
(完)
今年は西部では雪が積もって、中部でも雪がちらついた静岡県です。
本日も新聞の一面は雪の写真がでかでかと。
そして夕刊にちっちゃいマンガがのっていました。
静岡に雪が降ったら…
雪!雪!!メールしなきゃ!!(義務?)
テレビ出動。
記念撮影、犬以上に喜びかけまわる小学生、ドロドロの雪うさぎ、転倒事故。
以上が静岡の雪景色です♪(なんじゃそりゃ by北海道民)
全くその通り!!(笑)
そんなこんなで思いつき小説を書いてみました。
こじつけのマツコジテイスト。