「…も、もしもし?」
「………おう。」
うわっ 怒ってる!怒ってるなコレ絶対…
俺は思わず携帯を耳から離して、それが日向の顔のように眺めた。
「おい。」
不機嫌そうな声が聞こえて、俺は慌てて携帯を耳元にあてる。
「…あのぅ、お誕生日おめでとうゴザイマス」
「声が小せえなあ。」
「誕生日おめでとうっっ」
チームメイトがいっせいに俺を見てにやにやと笑った。
くっそう… やっぱロッカールーム出てから電話かけるんだった///
あ!って気付いたのが着替え始めたところで、とにかく電話一本入れなくちゃって思っちまった。
よく考えたらメールでも良かったよな。
…うう。
でもメールはメールで何て打ったらいいかわっかんねーし
「松山。聞いてんのか?」
「き、聞いてる聞いてる。」
「お前、俺がお前の誕生日、終わる一時間前に気付いて慌ててケーキ買ってお前んちに駆けつけた時
なんつった?」
「…ケーキって、コンビニのやつじゃん。」
「あんな時間にケーキ屋なんかやってるか。って、そんなことはどうでもいい。」
チームメイトが「痴話喧嘩か〜?」と聞こえるように言ってくる。
俺は「あっち行けっ」と睨んだが、今度は別の奴が背中を突いてきた。
仕方なく中途半端な着替え状態で外に出る。
「コラ松山」
「ちょっと、移動中。」
「あん時、恋人の誕生日忘れてたってどーゆーことだ、このバカ!とか言って、部屋から追い出しただろう?」
「その後窓から侵入してきたのは誰だ!」
「とにかくだ。一時間以内に俺んちに来い。いいな。」
「は?!ちょっ 無理だって!」
プツ ツーツーツーツー
切れた…
一時間以内って!
俺は慌ててロッカールームに戻り、やいやい言ってくるチームメイトをやり過ごしながら
バッグに荷物をぎゅうぎゅう詰めて外に飛び出した。
車とばせば、なんとか間に合うか?
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チャイムを鳴らしてしばらくするとドアが開いて、奥に日向の顔が見えた。
「3分遅刻だ。」
「はあ、はあ… み、三杉みてーなこと、言ってんじゃ、ねえぞ…」
駐車場から猛ダッシュしたせいで、息も切れ切れだ。
日向の胸に白い箱を突き付ける。
「ケー キ」
「……おう。」
少しは機嫌を直したのか、日向はドアを大きく開けて俺を招き入れる。
行き慣れた場所ではあるが、とりあえず「お邪魔します。」と言って中に入った。
ん?…あれ…? すげー いい匂いvvvv
「回鍋肉!!」
「飯、まだだろ?」
「やったー!!さんきゅ〜 ひゅーがvvv」
「っつか、俺の誕生会なのに、なんで俺が飯を作らなくちゃなんねーんだ。」
ぶつぶつ言いながら、日向はキッチンへと向かう。
いや、俺、別に飯作っておけとか頼んでねーしっ
「風呂沸いてるぞ。とりあえず入れよ。」
「あ。うん。」
これまた頼んでないからなっ
「…お前、その格好できたのか?」
「だって、一時間以内とか言うから。」
そう。
俺の格好ときたら、上半身は私服のTシャツ、下半身はユニフォームのままという、非常に中途半端な感じで。
「ケーキ屋だって、これで行ったんだからな。」
「どこの?」
「え?シャ●レーゼ。」
「……コンビニと変わんねーじゃねーか。」
「バっ… シャ●レーゼとコンビニ一緒にすんじゃねえ!!!!」
日向は笑いながら、ケーキの箱を冷蔵庫に入れる。
俺は荷物を置いて風呂場に向かった。
「チョコのプレートは?」
「入れてもらった。時間なかったから書いてもらってないけど。」
後で俺がチョコペンで『こじろうくん』って書いてやるよ、って言ったら、
自分で書くからいい、と、すげー丁重にお断りされた。
(完)
誕生日当日、何も出来なくてスミマセン…ということで、
松山にも誕生日を忘れてもらいました。(笑)
ところで、シャ●レーゼって全国区なのかなあ??