「きぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」
絹を裂くような声が早朝の合宿所に響き渡った。

「一体なんだい?!!!」
真っ先に廊下に飛び出したのはもちろん我らがプリンス三杉淳である。
「何今の声…」
目をこすりながら廊下に出てきたのは岬。
ちなみに同室の翼はまだ夢の中…
「今のは反町の声じゃないだろうか?」
寝起きとは思えない、大変冷静な声でそう言ったのは若島津で。
若島津の言葉を聞いて、三杉は『反町一樹 松山光』と書かれたドアを探しノックした。

「反町?」
すぐにガチャリとドアが開いて、反町が顔を覗かせた。
「…どうしたんだい?」
口をパクパクさせた反町はまるで餌を欲しがる鯉のようである。
首を傾げ眉をひそめた三杉の両肩をガシっと掴み、反町はようやく言葉を発した。
「あ、ままままま、松山が…」
「松山が?どうかした?」
「あ、あか」
「赤?」
「赤ちゃんになっちゃった!!!!!」
「……」
はい????
きょとーん顔の三杉を見て、それ以上の説明は無意味だとすぐに察知した反町は
三杉の手をひいて部屋の中に入れる。
と、ベッドの上には…
「…どっから入ってきたんだい?」
随分と小さな子供が気持ちよさそうに眠っているではないか。
「何?松山がどっかから連れてきたの?」
三杉は冷静にベッドに近づき子供の顔を覗きこむ。
なぜか大人用の…おそらく松山の…Tシャツの中ですやすや眠る子供。
「ちちち、違うんだ、三杉。」
反町がぺろん、と薄い掛け布団をめくると
「…ん?」
「ね。」
Tシャツと短パンがキレイに縦に並んでいて。
そのTシャツの襟から子供が頭を出して寝ている状態。
確かに。
これを見たら『松山が縮んでしまった』と見えなくはないが…
「まさか。」
「いや、これ、松山だって。」
「そんなことあるわけないじゃないか。」
「松山がどこからか子供をさらってきて、行方不明になるのだって十分変だろ!」
「そっちの方がまだ現実的…って、松山は行方不明なのかい?」
「今んとこ。」
「それを早く言いたまえ。」
やれやれどうしたもんか…と頭を抱えて振りかえると、騒ぎを聞きつけた連中が
いつの間にやら部屋の中にいて人だかりになっていた。
「ちょっといい?」
そう言って前に進み出たのは岬だった。
そして眠る子供をじっくりと観察して
「やっぱりこれ、反町の言うとおり松山だと思うよ三杉君。」
「…え?」
「この左肩の痣。」
岬が指さした場所には確かに赤い痣がある。
「今はほとんど消えてるみたいけど、小学生の時に教えてもらったんだ。
 生まれつき、ここに痣があるんだって。」
「そ んな」
「それにほら。この歳にしてこの立派な眉毛。絶対松山だね。」
じきに繋がるんだよ… とやたら神妙な顔して岬は言った。
「いや、信じない… 信じないよ岬君… そんな非科学的なこと…」
見れば見るほど松山に思えてくるが、親が医者である三杉にとっては
そんな非科学的なこと、とても信じる気にはなれない。
思わずふらふらと数歩後ずさった。
「でも絶対松山だって」
「僕は… 僕は… 絶対に信じないぞーーーーーっっ!!!!!」

「ふぎゃーーーーーーーーー!!!!!」

「?!!」
「あー。三杉君が大きな声出すから。」
「え?!ぼ、僕のせいかい?!!」
「三杉君のせいだよ。」
大声で泣き出した子供…おそらく松山のもとに駆け寄り、岬はその小さな体をTシャツごと抱き上げた。
「よしよし。怖くないよ〜」
「ふえっ ふえぇぇぇ」
「大丈夫だよ。いい子 いい子… ん?」
胸から腹にかけて、なんだかしっとり…???
「わーーーっっ おしっこ漏らしてる!!!!」



『松山が縮んぢゃった??事件』の幕開けである



「とりあえず言われたもん買ってきたぜ。」
南葛トリオが大荷物を抱えて帰ってきた。
合宿が今回は静岡だったため、地元民が買い出し要員にされたわけである。
「あー。恥ずかしかったな…」
「俺、初めて入ったぜ… 西●屋。」
「うん。あるのは知ってたけど、さすがに用事ねえもんな…」
店員さんにかなり訝しげな目で見られた3人だった。
「よし。とりあえずオムツだ。」
「って、三杉何でケータイなんか見てんだ?」
「そりゃ、情報を得るためさ。」
と、無駄に自信満々に答える三杉。
「だいたいの身長と歯の生え具合からして、1歳前後だと思われる。」
「おおー。さすが。」
「まだ当然オムツだし、ミルクや離乳食だって必要なわけ。」
「なるほど。」
さすが三杉だぜ…と感心されて少々気分良くしているところに滝からオムツを渡された。
「…え?僕がやるのかい?」
「他に誰がやるんだよ。誰もやり方なんてわかんねーぞ。」
「……」
紙オムツ片手に淳様は固まった。
なんて似合わないんだろう…と思いつつ、しかし天才三杉淳に不可能の文字はないのだ!と気合を入れて
しばらく考え…そして結局、おもむろに携帯をいじりだした。
「あ。ここにやり方書いてあるぞ。」
井沢がオムツの袋を指さした。
そこにはかわいらしい赤ちゃんのイラストで、オムツの付け方が書いてあった。
「それを早く言いたまえ。ええと… こっちが前だから…」
ぐるぐると手に持った紙オムツをまわしながら格闘する三杉。
そのうち待ちくたびれたように、チビ松山はまたぐずぐずとし始めてしまった。
「おい。三杉。また泣きそうだぞ。」
「仕方ないだろ。僕だって初めてなんだから。ええと…」
そんな三杉の姿を見るに見かねたのはこれまで人だかりの一番後ろで眺めていた
「貸せ。」
「え?」
日向だった。
「見てられん。」
そう言って日向はとりあえずTシャツにくるまされたチビ松山を引っ張り出して
見事な手際の良さでちゃちゃっとオムツを装着。
さらに下着とロンパースをさっさと着せて、ひょいっと抱き上げた。
「よしよし。寒かったよな。ごめんな。」
お尻をぽんぽん、と叩いてやると、チビ松山は日向の胸に顔をこすりつけた。
「…さすが。」
「感心してる場合じゃねえぞ。三杉。腹減ってるみてーだ。ミルク。」
「え?何でわかるんだい?」
「俺の乳を吸おうとしている。」
見ればチビ松山は日向の胸のあたりを、はむはむはむはむはむはむ……
「か、かわいい〜っっ」
「なんかの小動物みてーだな!」
来生と井沢が覗きこんだ。
「僕のオッパイ吸ってみる〜?」
と、能天気に会話に参加してきた翼を思いっきり無視して、日向は給湯室へ去って行った。



お腹も満たされすっかり満足したチビ松山は再び眠りについてしまった。
「さてと。とりあえず監督には僕の方からうまいこと言っておくとして。」
時計を見ればすでに朝食開始の時間。
「みんなはとりあえず朝食をとりたまえ。日向」
「うん?」
「松山はまだ眠っているようだし、朝食の間は僕がここにいるからあとで代わってくれる?」
「…ん?松山?」
「松山。」
そう言って三杉は眠るチビ松山を指さす。
「誰が?」
「…って、日向聞いてなかったのかい…?」
「何のことだ?」
「僕も信じたくはないが、コレが松山らしい。」
「…は?!」
「縮んだ 松山。」
「…………」
「日向?」
日向さんの目が点になってしまったのは言うまでもない。


(続く)

ミナ様に捧ぐ小説です!!
つ、続きます… (終わらなかった…)
「朝起きたら、松山くんが1歳児くらいに縮んでいた!!」
です。
2歳児の娘がいるのに、1歳児ってどんなんだっけ…?と思いだせない私vv
しかも完全母乳だっただからミルクの作り方も知らない私vv

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