「がーが〜っっ」
「おう。」
「ボー ボー」
「ボールか。ほれ。」
ぽてぽて と、まだおぼつかない足取りで布製のボールを追いかけるチビ松山。
こてん、と転んで起き上がって
「ええーーーんっっ がーがーっっ」
「痛くねぇ 痛くねぇ。男だろうが。」
日向に抱きついて持ち上げられる。
その様子をベッドの上から眺めていたのはこの部屋の主(?)の反町で。
「日向さん、ほんっとすげーっすね。」
「そうか?」
「うん。俺ありえない。子供の相手とか。」
「楽しいぜ?」
「ところで、がーがーってなんすか?」
「ああ。俺のことだ。ひゅうがって教えたんだが、後ろだけしか覚えてくれなかった。」
…ひゅーがの『が』なんだ…と反町はつぶやいた。

チビ松山が日向以外には馴れない…というよりは、
日向以外にチビ松山のお世話をまともに出来る人間がいなかったため
今日一日、日向は練習には不参加でチビ松山につきっきりだった。
ちなみに「松山と日向はいつものアレで今日一日謹慎です。」
と三杉が監督にしれっと話したことはとりあえず秘密である。(酷…)

「ふえぇ」
なかなか泣きやまないチビ松山に
「痛いの痛いの 反町んとこへ とんでけ〜」
「えぇ?!俺?!」
「ほら、痛くなくなっただろ?」
ついていけない…と、ばかりに反町はひとつ小さくため息をついて、ごろんとベッドに転がった。
「それにしても…」
「なんだ?」
「松山、元に戻るんですかね?」
「俺に聞くな。」
「戻らないと日向さんずーーーーっと松山のお世話係になっちゃいますよ。」
「…それは困る… いてて」
ご機嫌を直したらしきチビ松山が、にこにこしながら日向の顔をぎゅーぎゅーと抓りまくる。
一応納得はしたが、どうにもコレが松山だとは信じきれなかったが…
このでっかい目と立派な眉と、それから無駄に自分を攻撃してくるあたり、やっぱり松山か…
チビ松山の抓り攻撃をかわしながら、日向はしみじみと思った。
「あ。そろそろオムツぱんぱんだろ。変えるぞ。反町、オムツ取ってくれ。」
「はいはい。」
よっこらしょーとベッドから降りて、反町は片隅に置いてあった紙おむつを一つ取って日向に渡した。
「チビ、おとなしくしてろよ。」
ころん、と仰向けにさせると、ロンパースの下の方のボタンをはずす。
それから新しいオムツを下に敷いて、今着けているオムツをはずした。
「お。松山のちんこ、かーわいい〜vvまだ皮かぶってるし」
「…子供なんだから当たり前だろが。」
「でもホンモノ松山のちんこもかわいいですよね。」
あ、大きさの話でなくてね、と反町は続けた。
「かわいいというか、キレイというか。」
「…お前は変態か。」
「えー。だってそう思いません?」
「思わん。っつか、そんなにじっくり見た事ねえ。」
アホか…と、日向は再びチビ松山に目線を戻した。
「っ…」
(…う。)
ふいにチビ松山がホンモノ…というか高校生の松山の姿と重なって…
それまで「かわいい子供v」としか見ていなかったチビ松山が、急に「松山光」になってしまって。
「///」
「?日向、さん??」
「…   ぎゃ!!!!」
オムツを中途半端なままにしていたら、なんとチビ松山のおしっこ攻撃が!!!
「て… てめえ…」
「ぎゃはははははは!!!」
「笑うんじゃねえ!!反町!!」
「だ、だって… 松山の小便ぴゅーーーって… ぶはっっ」
「笑ってないで、とっととタオル持ってこい!!!!」
はいはーい、と、笑いを堪えながら反町は部屋を出て行った。


数十分後。
おしっこをひっかけられ、本能的に(?)逃げるチビ松山をとっ捕まえてオムツを着けてようやく落ち着いた。
当のチビ松山は今、岬が食堂のおばちゃんをたぶらかして(?!)
もらってきたバナナを日向に食べさせてもらっている。
「で、どうしたら戻るんですかねー?」
反町が先ほどの話題に会話を戻した。
「むしろ何が起きたのかまず知りたい。お前一緒だったんだろが。」
「知りませんよ。起きたらコレだったんですから。」
「役に立たねえな。」
「何かの呪いとか?」
「お前、全然真剣に考えてねえだろ…」
「あ。」
「あ?」
「呪いなら、愛する王子様のキッスで元に戻るんじゃ??」
反町はわざとらしく『キッス』を強調して、唇をチューの形にした。
「…お姫様の間違いだろう…」
「あは。そっか。」
「っつか、ありえん。」
「松山が縮んだこと自体ありえない話なんだから、逆にありかもしれませんよ〜」
本当に真面目に考えてるのか考えていないのか…(たぶん考えてない)
反町はものすごーーーーく軽いノリで笑いながら言った。
それから立ち上がってひとつ伸びをして、
「さーて。俺、風呂行ってきます。」
「おう。」
「日向さんは?」
「…やっぱコイツも入れなきゃまずい…んだろうな。」
「ですかね。」
「…最後にする。」
「はーい。」
湯船にうんちされても困るしね〜 とか言いながら、反町は風呂の支度をして「お先に」と部屋を後にした。


「…松山」
バナナを腹いっぱい食べて満足げなチビ松山は、眠たそうに目をこすった。
「がーがぁ…」
「ほら、来いよ。」
ぽてぽてと手を伸ばして近づいてくるチビ松山を抱き上げ、とんとん、と背中を叩いてやる。
(満腹で寝る前に風呂入れちまえば良かったな…)
失敗した…とか思っていたら、ふとまた高校生の方の松山のことが頭を過った。
松山の裸の印象は、白いな、くらいだった気がする…


 裸の松山を抱きかかえて風呂に入る、同じく裸の自分。
 抱いたまま湯船に浸かって、それから、体の隅々まで洗ってやって…

 反町の言う、キレイな松山のソレって、どんなんだ???


「がーがー」
「?!///」
(おおおおおおおおお俺はチビ相手に何を変態な妄想をしているんだーーーーーっっ)
思わず力強くチビ松山を抱きしめた。
「すまん!チビ!!」
「?」
はあ…と日向は大きくため息をついた。
それから、チビ松山の脇を抱えてあらためて顔を見る。
それが楽しかったのか、チビ松山は手足をばたばたさせてきゃっきゃと笑った。
「お前、本当にどうしたら元に戻るんだ?」
『戻らないと、日向さんずっと松山のお世話係になっちゃいますよ』
先ほどの反町の言葉を思い出す。
「…大丈夫。」
「うー あーー」
「もし、元に戻らなかったら、俺が、ずっと…」
「がー」
「ずっと… 一緒に… 痛っ!」
「がー がっっ」
チビ松山が日向の頬を両手でぎゅぅっと掴んだ。
そして


vv ちゅ vv


『呪いなら、愛する王子様のキッスで元に戻るんじゃ??』


「…へ???」
突然、重たくなった膝の上。
「え?日向??」
「…松」
「ぎゃあああああああ///」

日向の膝の上には、
元に戻ってロンパースも紙オムツも全部破けて素っ裸になってしまった…
松山が、いた。


(完)

完結ですv
ミナ様、どうでしたでしょうか?!!
お気に召して頂ければ幸いです。

ま、子供なんで、いつもは使わない下ネタ言葉も思いっきり使いましたv
お風呂妄想中はもちろん高校生松山の方です☆

小さな恋のメロディ♪1   love-top