(抱かれたい男NO1…ねえ…)
思わず雑誌と、抱かれたい男スポーツ部門NO1の当の本人日向の背中を見つめてしまう。
認めたくはない、けど、確かに男の俺から見てもカッコイイんだと思う。
背高ぇしスタイルいいし男前だしサッカーうまいし。
抱かれたいっつーくくりになると、結局女子は草食系より肉食系を選ぶわけだ、なるほど。
しかしこの後ろ姿は『抱かれたい』より絶対こっちだろ…
(結婚したい男NO1。)
実際は、某有名ゴルフプレイヤーが第一位で、第二位が三杉だったりするんだが。
(結婚したいっつか…嫁に来てほしいっつか。)
いやいやいやいやいやいやいやいやいや 嫁って。
俺は自分自身にツッコミを入れて雑誌を閉じると、元あった場所に戻した。


俺、松山光は今、何の因果か日向小次郎のマンションの部屋にいる。
所属チームを移籍して、関東に移り住んでから早1か月。
ようやく落ち着いてきたところで反町からお誘いがあって、
『日向さんちで飲むからおいでよ〜vv』って言われたんだけど、
当の反町は急用が出来たとかで来れなくなってしまった。
それならまあ、今回の話はナシってことで…と思っていたんだけど
予想外に『せっかくだから来るか?』と日向からメールがきて、
特別断る理由も思いつかなかったから『じゃあ行く。』と返事をしてしまって、
今現在、結構後悔している、そんな俺です…

え?

なんで後悔してるかって????


………ぶっちゃけ何しゃべっていいかわかんねーから!!!!

です。
そりゃ、試合や合宿なんかで何度か一緒になっちゃいるけど…
二人きりで過ごしたことなんかほとんどねーし、
しゃべったらしゃべったで喧嘩になることの方が多かったし…
日向は嫌いじゃないけど、サシで飲むほども仲良くない。
反町がいるならちょうどいい機会だから、ちょっと仲良くなってもいいか?と思っていたのに。
いきなり、こんな、二人きりになるなんて想定外だった。

日向はさっきからキッチンで何かを作っている。
エプロンつけて。
ものすごく手際よく。
…日向が料理するなんて知らなかった。
イメージねえって絶対。
どっかから採ってきたバナナとかむしゃむしゃ食ってそうじゃん…なんか。
あと、そこらへんに自生してる草とか。
って、俺の中の日向って原始人かーい!!!(再びツッコミ。)
しかも部屋ちゃんと片付いてるし。綺麗だし。
それも、神経質な男の片付け方じゃなくて、なんつーの?ある程度小綺麗というか。
片付け上手というか。そんな感じなんだよな。
(…なんでだろう。妙に落ち着く部屋だ…)
飾られた高校時代のサッカー部集合写真を眺めながら、俺は出された冷茶を飲んだ。
「おい。お前、さきイカ買ってきてたよな。」
「ん?お、おう。」
「出せ。」
言われるがままに傍らに置いてあったコンビニのビニール袋からさきイカを取り出し日向に渡す。
「何?」
「いや、キュウリが残ってっからコチュジャンと酢であえて、さきイカキムチ作ろうかと…」
とか言いながら、キッチンへ戻っていく。
…な、何それ…????
どんだけ主婦力高ぇんだコイツ…


しばらくして日向がリビングのテーブルに料理を並べ出した。
「…これ、全部お前が作ったのか…?」
「ああ。あんまり手間かかってねえけどな。ビール、缶のままだけどいいか?」
「あ、うん。サンキュ。」
「そんじゃ乾杯。」
「乾杯…」
とりあえずビールを一口飲んで、目の前の料理に箸を伸ばす。
「いただきます。」
まずは俺の大好物のハンバーグから…
「……うんめぇ!!!」
「そりゃ良かった。」
「これ、手間かかってんだろ?」
「いや、デミグラスソースは市販のやつだし、オーブンで焼くから時間かかんねーんだ。」
「こっちもうまい!!」
「トマトと卵とザーサイ炒めただけなんだが、結構いけるだろ?」
話を聞けば確かに手間も時間もたいしてかかってない料理ばかりだけど、とにかく美味い!!
っつか、逆に手間と時間をかけずにちゃっちゃとこれだけ作れる日向すげぇ。
あまりに感動して「美味い!」「すげーー!!」を連発していたら日向もちょっと気分が良かったのか
いつも笑顔なんかあんまり見せることないのに(少なくとも俺に対しては。)
だんだん機嫌良さそうな顔になってきた。
「あー。もー。俺お前んちの子になろーかな〜vvv」
「…なんだそれは。」
「それか嫁にもらう。」
「はあ??」
「だって、お前、主婦力高そうじゃん。料理うまいし掃除上手だし。」
酒もいい感じでまわってきて、俺は上機嫌にさっきの雑誌を取り出した。
そうして日向のおっとこまえ顔写真がババーン!と載っているページを開いて見せて
「おうおう。抱かれたい男〜〜っっ」
「黙れ。それは反町が勝手に置いていったんだ。」
「確かに男前だよなあ…」
まじまじと雑誌と実物を見比べながら言ったら、顔を真っ赤にして照れてしまった。
「うるさい。」
「でも俺の中ではぜぇーーーーーっっったいこっちだな。」
と、某有名ゴルフプレイヤーの写真を指さす。
「日向小次郎、結婚したい男、NO1。」
「……あのな」
「三杉を抑えての堂々一位。」
っつか、三杉なんかと結婚したらめんどくさそう…とつぶやくと、日向はぶふっと吹き出した。

さっきまでは何をしゃべっていいかわかんねえ…なんて思っていたはずなのに…
「嫁にぃ〜 こないかぁ〜 ♪」
「いくつだお前は…」
酒と美味い料理と妙に落ち着く雰囲気の部屋と珍しく笑顔を見せる日向のおかげで
すっかり日向と二人きりの家呑みを楽しみ始めてしまった俺だった。

(続く)


ことぶき優花様に押し付けのお礼の品です。
もすこし続きます。
…ええと、リクエスト通りにいってるかどうかちょっと微妙ですが…
優花さん、こんなんでスミマセン…
「二人・遊戯」→ふしぎ遊戯をモジってみました。
(特に意味はありません。カラオケでつい歌ってしまうアニソン。)

ちなみに料理レシピは中途29ちゃんの「家呑みレシピ」参照。
まじで使えます。29ちゃんすごいvvvv
あとほぼ毎日活用しているクッ●パッド様様。

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