「嫁にぃ〜 来ないかぁ〜♪」
と、ほんのり頬を赤く染めてご機嫌に歌っているのは松山光だ。
何の因果か俺んちで奴と二人きりの飲み会をしている。
反町が『松山連れて遊びに行ってもいいですか〜?』なんて言いやがったから
快く『いいぞ〜』と返事してやったのに、当の反町はどーーーーしてもはずせない用事ができたとかで
(120%合コンだと思うが。)来れなくなってしまったのだ。
別にそのままこの話はなかったことで…でも良かったんだが、
俺は予定を変更されるのがあまり好きではないので…
なんつーか、ほら、今日はカレー!って決めてたからラーメン屋に行くのは嫌だ、みたいな…?
とにかく、今日はみんなでメシと決めていたから一人メシは何となく嫌で
ダメもとで松山に『せっかくだから来るか?』とメールしてみたら思いの外OKを頂いてしまった。
そして、今現在、結構後悔している。
え?
なんで後悔してるかって????
……こいつがこんなに酒が弱いだなんて知らなかったから!!!!
です。
おいおい。
まだ開始30分ちょいだぜ?
なぜそんなに真っ赤になる???
後ろにあるソファーに寄りかかるどころか、ぐんにゃり上半身を預けている状態ですが…?
「なんでひゅーがくんはぁ こんなにおりょーりがぁ うまいんですか〜?」
マグロとアボカドのわさびマヨをつまみながら、ゆらゆら横に揺れている松山に尋ねられる。
「…いや、俺んち母ちゃん働いてたから、よくメシ作ってて… っつか、てめーは何でそんなに酒弱いんだ?」
「ぜんっぜん よってないだろう〜?」
わおー。絵に描いたような酔っ払いvv
まあ、なんでもいいが、こんなに美味い美味いと言いながら食べてくれるのは素直に嬉しい。
若島津や反町に振舞ったって、ちっとも素敵な返りはねえし、
いっぺん三杉に食わしたら「たまには庶民の味もいいね。」とか言いやがるし。アイツめ…
「…また作ってやってもいいぞ…」
思わずぼそりと言ったら
「え?!!マジで?!!来る来る!!!」
満面の笑みで言われちまったから…
ちょっと嬉しいじゃねえか、チクショー…///
「ひゅーが ぜってー嫁にしてぇ」
「だから。お前。さっきからおかしいだろ、視点が。」
「ほえ?」
「なんで俺がお前の嫁なんだよ。」
日向の嫁になる子が羨ましい、とかなら分かるけどよ…と続けると
「…あー。そうか。でもそれだと、俺がひゅーがの作るメシ食えるわけじゃねえからなあ。」
…だーかーらー。
「…別に嫁にならんでも食わせてやるぞ。…たまになら。」
すると、松山はきょとんと目を丸くした。
「ひゅーが ちょーーーーー いいやつじゃん」
「なんだ。その意外!みてーな言い方は。」
「だって、こじこじ、俺にはいっつも つめてーからさー…」
…… こじ こじ ??????
「?!! なっ/// こっ///」
「こじこじって なー かわいーだろ??」
松山の顔がふにゃんってなった。
「俺 ケンカばっかしてーわけじゃねーのに」
「///」
「もっと 仲良くなりてーなー って 本当は思ってて…」
「な かよく って」
座ったまま、重たい身体をずるずると引きずるようにして松山が近づいてきた。
そして胡坐をかいて座っていた俺の上に倒れこんでくる。
突然松山の体温を近くに感じて、どうしたらいいかわからなくなった。
酔っぱらって力がうまく入らないんだろうと思い身体を支えてやると、
今度はいきなり、ぎゅーーーーーっと抱きつかれて面食らう。
「お、おいっっ///まつや」
「こじこじ」
「コラっ/// いって…」
松山の両手でバチンと顔を挟まれ、こっち見ろとばかりに固定される。
頬に触れる掌がやたらに熱い… そんで顔が やたらに 近い…
「ピカたん」
「…ふぁい?」
「ピカたん、と呼んでみて こじこじvvv」
なななな 何を言ってるんだコイツわっっっ!!!
松山のまっすぐな目が、俺の目をじっと見つめている。
酔っぱらってるくせに、絶対に譲らない、という このまっすぐな 目。
(いらんところに眼力使いやがって…)
「………ぴ…」
「ぴ?」
「ピカ…たん」
「ん。」
また松山の顔がふにゃんってなった。
「こじこじ 嫁に こないか?」
「…ピカたん…」
「……」
「ぴ… ピカたん?」
「ぐーーーーーーーーー」
って寝てんのかーーーーーーーい!!!!!
半目のまま寝てますよこの人!!!
誰か〜〜〜〜 (泣)
とりあえず沈没した松山をソファーの上に移動した。
(こじこじ よめに こないか?)
…アホか…。
そんで俺も『ピカたん』って、どーゆーつもりだ… 意味わからん。
俺はビールを一気飲みしながら…
アホかアホかと何度も心の中で繰り返すのに、それでも、どこかくすぐったくて…
どうしようも なかった…。
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翌朝、目を覚ますと俺はソファーの上で寝ていた。
毛布がちゃんと掛けられていて。
キッチンからはトントンと包丁の音が聞こえてきて、目を移すと昨日と同じようにエプロン姿の日向が立っている。
朝ご飯まで用意してくれるつもりなんだろうか…?
ホント、お母さんみてーだな、と思いながら、毛布を軽く畳んで、日向に近づいた。
「…おっす。」
「お。起きたか?」
「…ご、ごめん… 泊るつもりなかったのに。」
日向は包丁を置いて、こちらに向き直った。
…やべ… 怒ってるのかな…
「松山。お前昨日のこと、覚えてるか?」
「へ?」
「昨日のことを覚えているのかと聞いている。」
「…メシ、うまかったデス。ごちそうさま デス。」
「……」
日向はしばらく俺の顔をじーーーっと見て、そうか、と言ってまた調理に戻ってしまった。
なななななな何???
俺、酔っぱらって何かまずいことしたんだろうか????
すげー騒いだとか、リバースしたとか?!!
ヤバイ!!いっこも覚えてねえ!!!
「ひゅ、ひゅーがっ」
「おん?」
「俺、酔っぱらってなんかしちゃった??」
ドキドキしながら尋ねると、日向はこちらをゆっくり振り返って言った。
「…いんや。別に。」
「そ、そうか。」
「全然、大丈夫だぜ?ピカたん。」
「……」
は???ピカたん????
「な///」
日向はニヤーーーーーと笑って見せる。
炊きたてのご飯とみそ汁のいい匂いがキッチンに漂っていた。
(完)
以上、でした!!
優花さん、ど、どーだったかな???(汗)大丈夫ですかね??
もっと松山泥酔させた方が良かったですかね??
リクエストは@結婚したい男日向さん A壊れて可愛くなる松山
のどちらか、ということでしたので、いっそ両方繋げてみました!!
「こじこじ」「ピカたん」のリクエストもありがとうございました☆
書いててめちゃめちゃ楽しかったです〜☆
まずは胃袋を掴め!とか言いますが、しっかり掴まれた松山です。