“左足にある筈の、松山の傷”

当たり前だった。
だって、この小さい松山はおれのいる明和とは対戦していないのだから。
でも、その当たり前の事実を突き付けられて、
おれは冷水を浴びせられたようにはっきりと目が醒めてしまったのだ。
”この松山は、本当におれの知っている松山じゃない“ということ。
“おれと生きてきた松山じゃない”ということ。
生意気で、負けず嫌いで、乱暴で・・・・・・・・・・・・意地っ張りな・・・。

そして、同時に思い出してもいた。

たまに痛むと言っていた左足。
あいつは、そんなことを恨みがましく言う奴じゃねえけど、

“もし、あの怪我がなかったら”・・・って。
“もし、おれが松山と対戦していなかったら”・・・って。

この世界にくる前の晩、おれはそう、考えていたんだってこと。

「ごめんな・・・・・おれ、やっぱりできねえ・・・・・」

そう言ってギュッと抱きしめると、松山(小)は安心したようにおれにしがみ付いて、Tシャツを涙で濡らした。
そうしていると・・・・・・段々とその姿が見えなくなって・・・・・・・・・・・・・・・



『happy man?』9



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「すすすすすす・・・・・・・好きだって・・・・だって、お前は小泉さんを・・・・・・・・・・・」
「だから・・・・・・・気が付いたんだよ。あの人に対する気持ちは・・・本当に家族を慕う気持ちと一緒だって
・・・・・・・・・・・・・お前を見ていて、気が付いたんだよ」
「そそそそそ・・・・・そんなことって・・・・あるか?!」

あまりにも面喰ってるから、抱きしめてみた。
松山(大)のびっくりしたように息を詰める音が聞こえた。

「ひゅう・・・・・が!」
「・・・・・・・・・・・嫌なのかよ?やっぱり、元のおれじゃねえと・・・・・・・」
「そ・・・・・んなこと・・・・・・・・ねえ・・・けど・・・多分・・・・・・
お前が・・・・・・・日向小次郎なら・・・・・・・・・・」
「おれは、日向小次郎だ」

「それなら・・・・・・・・いい・・・・かも・・・」

そう言うと、松山はおれにキスをしてきた。
深い、深い・・・・・・・・・それはそれは気持ちのいい・・・・・・・。
でも、ぼーっとしていると、唇は離れていった。

「松山?」
「日向には・・・・・・・・・・・・・その、おれの知ってるあいつには・・・・・・・・・
あんまりおれから・・・・その、してやれなかったんだよ・・・・・こんなことになるなら・・・・・
もっと素直になってれば良かったかな・・・・って・・・・・・・・・・・・おれ・・・・・・」
と言って言葉を詰まらせる。
「松山」
今度は自分から抱きしめて、キスしてみた。
「お前になら・・・・・・・・・素直になれそうな気がする・・・・・・・・・・」

そう言って、下から覗きこむ目。
その目に、今度はこっちが息を詰まらせそうになる。
・・・妖艶って言ったら言い過ぎかもしれないけど・・・・・・・・・・・・
強気な目の中に不思議な色を湛えていて・・・・・・・・・それは多分欲情の色で。
そんな目でまたキスしてくるから、情けないけどおれの下半身はドンドン反応してしまう。
堪らず今度は自分から舌を絡めると、ギュッと背中を掴んできて、

「ひゅう・・・が・・・」

その目から涙が溢れた。

「ん・・・・・・ふっ・・・・・・・・・」

Tシャツの下から手を入れると、感触に体をビクッと震わせて、鼻から漏れるような声を出すから興奮してしまう。
でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「松山・・・・・・・・・・・その・・・・・・・・・・・・・・」
「え?」
「おれ・・・その・・・・・・初めて・・・・・・なん・・・だ・・・・・」

そう言うと、目を丸くして見つめ返してきた。

「悪い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そう・・・・だよな・・・・・・・・・だ・・・・・・から・・・おれが・・・・」
「え?」
「お・・・・・・おれ・・・・・・・・が・・・・・・・・教え・・・・・てやるからっ!!」

―お願いします。

思わず言ってしまいそうになった。

今度はどちらからともなくするキス。
もう、頭の中が溶けてしまいそうなくらい気持ちが良くって・・・・・・・・・・・・・。

でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

“日向先輩!!おれ・・・・・・・・・・・・・”

正直、こんな呼吸も整わない状態でこんなことをどうして思い出したのかが不思議なんだけど・・・、
これもだめかもしれないって、思ってしまった。

“日向先輩に、最高のパスを送ることが夢なんです!”

あいつの声が頭に響いた。
こんな姿を見たら・・・“あの松山”が悲しむかもしれないって・・・・・・・・・・

そして、おれは思い出したんだ。

“最高のパスを送る”って何回も言っていた松山(小)。
でも、学年が違うからそれは何年も経たないと叶わない願い。
だから、叶えてやりたいっておれは思ったんだ。
ずっと先じゃなく、例えば松山が同じ学年だったらって。
おれは、この世界にくる前の晩に、そう思っていたんだって・・・・・・・・・・・。

「日向?」
「悪い・・・・・・・・・・・やっぱりおれ・・・・・・・・・・・・・」

そう言うと、段々と松山(大)の姿が視界から消えて・・・・・・・・

「日向?」
「松山??お前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大きい!!ちゃんと、大きいぞ!!」
「戻った・・・・・・・・・・・・・・・のか?」
「戻った!!戻ったぞ!!おれは!!松山っ!!」

そう、おれは戻ったのだ!!
カワイクないけど・・・ホンっ気でカワイクないけど・・・・
誰よりもカワイイ松山(大)の元へ!!
でも・・・・・・・・・・・

「松山・・・・・・・・・お前・・・・・“おれじゃねえおれ”とやってただろ?!」
「やってねえ!!・・・・・・・・・やってねえよ!最後まではっ!!」
「最後までって・・・・てめえ・・・・!!」
「お前こそ・・・・・・・・・・あっちのおれと・・・・何してたんだ!!」
「おれだって・・・・・・・寸でのとこで止まったぞ!!」
「寸でって・・・・・・・・この野郎・・・・・・・・・・・・・・・」

微妙に色っぽくなってる松山だったけど・・・・・まあ、取りあえず、未遂で済んだらしい。
おれはその熱の残る唇に深いキスを落とした。

「お前じゃなきゃだめだって・・・思ったんだよ」
「日向?」
「おれには“この松山光”じゃなきゃダメだって・・・・・・・・・・・・・」
「日向・・・・・・・・・・・・・・・」

もう後は、何も口に出来ないように、首筋にキスをして、シャツに手を入れて・・・・・・・・・・・・・

「あの日向の方が・・・・・・・・・・素直だった・・・・・・・・・・・・・・あっ!!」
トランクスをおろして半分立ちあがった性器に口づけると、少し高い声が響いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・そうか?」
「あっ・・・・・・あっ!!しゃべ・・・・・・・・・・・・・・んな!!んんんっ!!!
お・・・・・前なんて・・・・・・・・・・戻ってこなくって良かったのに・・・・・・・・」
「松山・・・・・・・・・・・・・」
口を離してその瞳を見つめると大粒の涙がこぼれていて、
嘘が付ききれない瞳は完全におれを求めていたから・・・・・。
もう一度慈しむように深いキスをして、強く抱きしめた。

「馬鹿野郎・・・・・・・・・・お前なんて・・・・・・大っ嫌いだ・・・・・・・!!」

そう言いながら強く抱きしめ返してきたから、

「ごめんな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そう言って、邪魔な服を脱がしていく。
久しぶりだったから少しキツかったけど、“日向”と呼び続けるその小さくない体にゆっくりと入り込む。

「あっ・・・・・・・・、あ、あ!」
「松山・・・・・・・・・好きだ・・・・・・・・・・・・・」

動きに合わせて声を漏らす・・・
松山の瞳がそう告げるのと同じように、珍しくおれも口に出してそう言ってみたのだった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でもよ」
「何だ?」
「お前が半分勃った状態で戻ってきたってことは・・・・・・・・・・・向こうのおれもそうだったってことか?」
「勃った・・・・・・・・て・・・・・・まあ、そうだけどよ」
「そ・・・・・・か」
と、宙を見て考える松山。
「どうしたんだよ」
「いや・・・・・・・・・・・実は、あっちのお前も・・・・・・ちょっとそんな感じだったんだよな」
「あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

こっちと違って、あっちは小学生みたいな中学生の松山だから・・・・・・・
ちょっとヤバいんじゃないかって言いながら、まあ、おれ達でどうにもなるわけでもないから、
“あっちはあっち”で上手くまとまるといいな・・・・・・・って、かなり無責任な感想を言い合った。

「もう・・・・・・どこの世界だろうが浮気するんじゃねえぞ」
と、消毒のようにその唇にキスを落としてみながら思う。

うん、おれはきっと、happy manに違いない!
多分、あっちのおれもな。


(完)



haruharuさんありがとうございました!!
むっちゃ楽しませて頂きましたああああっっ
だけどもだ・け・どv
松山(小)の方がどうなったのか気になるぅぅ
徐々に大人になっていく松山(小)←日向さんvvv
抑えきれなくなっちゃうの?!!ねえ!!
次回、リクエストできる機会があったら、確実にリクエストすると思われます…


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