『happy man？』8
「告白しろ！」
「ええ？！」
“誰だか教えろ！”
・・・・なんて、あんまり真剣な目で問い詰めるものだから、
“小・・・・・・・・・・・・・いずみ・・・・さん・・・だよ・・・・・”
と、思わず白状してしまった。
すると、冒頭のようにハッパをかけられてしまったのだ。
「そんな・・・いつまでも悶々としてるくらいなら・・・さっさと告白しちまえ！」
「お・・・おま・・・・そんなこと・・・言うけどもなー」
「元の世界には・・・・戻れないかもしれないんだろ？」
「おれが元に戻れなかったら・・・・・・・お前だって困るんだろ？」
そう言うと松山（大）はハッとして俯いてしまった。
「そんなこと考えるなんて・・・・・・・お前は日向だけど、日向じゃねえ！
おれの知ってる日向は・・・もっと強引で・・・・・自分勝手で、わがままで・・・・・・、
人のことなんて全く考えねえ・・・・・・・・・おれを・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「松山？」
「おれを・・・・・・・・・・・・・置いて行っちまうなんて・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・松山・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう言って震える姿はおれの知っている松山より大きいんだけど・・・・・・・・・・
屈託のない小さい方より頼りなく見えてしまった。
“おれじゃないおれ”を好きな・・・多分意地っ張りな大きい松山。
「分かったよ・・・・・・・」
「日向？」
「告白・・・・・・・・・・・・・してみるよ。それでおれが“お前の好きなおれ”に近づくならな」
一体どういう理屈なんだかわからないけど、思わずそう言ってしまった。
“この松山”の為に告白する・・・・・・なんて・・・・・・・・自分でもどうかしてる。
でも、
「・・・・・・・・・・・・・そうか、頑張れよ！」
と、複雑な表情で・・・それでも力強く笑いながら背中を叩くこの男を、少しでも元気にしてやりたかった。
表面だけじゃなく、心から。
だって、いくらおれが“恋人の日向”じゃないからって・・・他の人を好きだなんて、辛くないわけがねえじゃねえか。
しかも、その恋を後押しするなんて・・・・・・・・こいつは馬鹿すぎる。
そんな気持ちを考えると、切なすぎるじゃねえか。
だからせめて、そんな気持ちには気が付かないフリをしてやるのが、おれの今の精一杯だったんだ。
「全ては貴方次第よ。今までがそうだったようにね。
勿論、私たちが出来うる限りの最大限のサポートはしていくつもりよ。
それも・・・・・今まで通りだけどね」
高校卒業後の進路についての、打ち合わせの最後に彼女はそう言った。
おれ次第ではプロからも誘いが来る・・・それには海外チームも含まれているということ。
自信に満ち溢れた瞳、態度。
言うなら・・・・・・・今かもしれない。
「京子さん」
「え？」
「おれ・・・・・・・・・・・・・・・・貴女を・・・・・・・・・」
元の世界では言えなくなってしまった言葉。
もしかしたら、こっちではおれは・・・・・・・・・・・・・・・・
でも・・・・・・・・・・・・・
「し・・・・・・・・・・・信頼してます」
やっぱり、それは違う気がした。
「やあね〜、信頼してもらえるように頑張ってるんだもの！！でも、嬉しいわ。ありがとうね」
「おれ、姉ちゃんとかいないけど・・・・・・いたら、こんな感じなのかなって」
“お母さんじゃなくて良かったわ〜”と、そう言って照れながら笑う顔が本当に嬉しそうだったから、
これで良かったんだって思った。
そう、おれは分かってしまったんだ。
彼女に感じていたのは・・・家族に対するような信頼と愛情。
本当の恋を知って、おれは気が付いてしまったんだ。
部屋に戻ると、松山が複雑な表情で迎えてくれた。
おれは一世一代の告白のシーンを余すところなく伝えた。
「えええ？！」
「・・・・・・・・・・・なんか文句あんのかよ」
「姉ちゃんみたいって・・・・・・・・・・・・・・そんな告白あるか？！」
「・・・・・・・・・・・・・・いいんだよ！元の世界で言えないからって・・・・・・・・
こっちで言うなんて。やっぱり卑怯な気がするんだよ」
「それにしても・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それに・・・・・・・・・・・・・・・」
“何だよ？”と訝しむ松山の顔を見る。
「おれ・・・・・・・気が付いたんだ」
「何をだよ」
「お前のこと・・・・・・・・・・・好きになっちまったみてえだって」
「はあ？」
松山はおれを怪訝そうに見て、かなり不機嫌そうにそう言った。
そう、おれは気が付いちまったんだ。
松山（大）に、恋をしてしまったことに。
（続く）
おおおおおっっ
ここにきてまさかの（大）に恋心っっ
京子さんへの告白（できなかったけど）にもびっくりでしたが、
それ以上にっっ こっちの日向さんどーする？！！