「あ、まっつん、日向さんおっかえりなさーいvv」

松山に手をひかれるままに歩くこと30分。
ようやく二次会会場のカラオケボックスに到着。
・・・・っつか、さっきの飲み会の会場からすぐじゃねえか。
迷いやがったな・・・ しかも迷ったことを黙ってやがったな松山のヤロウ・・・

ドアを開けると、もうすっかり出来上がった酔っ払い共が狭い部屋に犇めき合っていた。
「ひゅうがさーんっ」
ご機嫌にマラカスを振る反町が無理くり席を詰めてくれ、俺はそこに腰を下ろす。
すると真っ赤な顔で俺を覗き込み、やけに嬉しそうににじり寄ってやがった。
「悩み事は解決しましたあ?」
「・・・・悩み事?」
「まっつんが言ってましたよ〜。日向さんが珍しく悩み事があるらしくて、相談に乗ってやるんだって。」
「ああ?」
なんだそりゃ・・・ わけわからん。
「もう。悩み事ならそりそりが聞いてあげマスのに〜っっ」
そう言うと反町は俺のほっぺたを人差し指でぐりぐりと突いてきた。(結構痛い。)
コイツ、酔うとおネエになりやがって微妙に性質が悪い・・・
それよか、なんなんだ。悩み事っちゅーのは。
だいたい、悩み事を反町に相談するほどアホじゃねえし、松山にだって相談する予定はなかったはずだ。
・・・・アノ野郎・・・適当言いやがって。
話があったのは松山の方じゃねえか。
「そ・れ・と・もぉ」
「何だよ・・・」
「まさか、それは単なる口実で、実は二人きりで何かイカガワシイことを?!!」
ドキ。
「何で俺と松山がイカガワシイことをしなくちゃなんねーんだ。」
「浮気しちゃいやんvvひゅーがさ・・・・ ぎゃ!!暴力反対!!」
振り上げた拳でこめかみをぐりぐりしてやる。
「いだだだだ・・・・ 健ちゃん助けてーーーっっ」
と、助けを求めた若島津はチラ見してスルー。友達がいのない奴・・・

・・・・ってか

さっきの ドキ。 は、何だ????

ドキっとするようなことはいっこもないだろう?!!俺!!!
ガキじゃあるまいし、今更告られたくらいで何を動揺する必要がある?
・・・いや、相手が相手だから動揺するのは当たり前なのか?
とか、すげー短時間にそんな事をぐるぐる考えていると、
超ご機嫌ちゃんに椅子の上で飛び跳ねながら「リンダリンダ」を熱唱する松山の姿が目に入った。



二時間後。
まだまだイクぜ!という奴らと、終電が行っちゃいました・・・という奴らが反町のマンションに流れた。
俺はそのどちらでもなかったんだが・・・
なんだかんだと色んな奴に言いくるめられて、気づけば反町邸に連行されていた。

奴のうちには昔懐かしいゲーム機が揃っていて。
それこそ俺たちが小中学生くらいの時に流行ったアレとかコレとかで、リビングは現在大いに盛り上がっている。
ちなみに俺は当時サッカーと新聞配達で忙しかったので、全くもってその手はわからなかったりする。
それ以前にゲーム機なんか高価すぎて雲の上の存在だったからな・・・。

「ぜんっぜん興味ねえって顔ですねえ。」
と、俺と同じく遠くから画面をぼさっと眺めているだけの幼馴染が言った。
「興味ねえっつーか、知らねえからな。」
「右に同じデス。」
「っつーか、お前なんでいるんだ?家近所だろ?」
「その言葉、そのままそっくりあんたに返しますよ。」
そう言って若島津はくくくと笑った。
そりゃそーだ。
ここから若島津の実家までは歩いて5分、俺ん家までは10分なのだ。
反町がこの部屋を借りたのは、軽い嫌がらせとしか思えない。
「まあ、ね。なんとなく。せっかくだし。」
「何がだ?」
「せっかく、日向さんが久しぶりに帰ってきてるんだし。それに」
「?」
「松山もいるし。」
・・・・よく分からん・・・。
奴にしてはやけに嬉しそうに微笑みながら、穴に落っこちていくマリオに絶叫する松山を眺めている。
「・・・・ちょっと寝てくる。」
「あっちの和室が空いてますよ。」
若島津に教えられた通り、すぐそこにある襖を開け薄暗い和室に入った。
別に眠いわけじゃないんだが・・・ なんとなく、微妙に、この場を離れたい気分だった。


和室は普段使っている様子はなく、部屋の隅にダンボール箱や衣装ケースが積まれていた。
半分物置みたいなもんなんだろう。
それでも几帳面な反町らしくキチンと掃除はされており、俺は安心して畳の上にごろんと仰向けになった。


ーーーーー 俺、日向のことが好きだ。

ーーーーー 考えさせたら答え出るのか?


「・・・・・・・・」
一度大きく深呼吸をして横を向き、目を閉じた。
畳のいい香りがなんとなく心を落ち着かせてくれる。
じきに緩い眠気が訪れうとうとしていると、ふいに視界が白くなった。
誰かが室内に入り、音を立てないように襖を閉める気配がする。
やがてそいつも横になったようだった

・・・・って

近!!!

背中のすぐんとこにいるぞ確実に!!
なんでこんだけスペースがあるのにそこに寝る?!!
近ぇだろ めちゃくちゃ!!!

だがあまりありがたくないことに、その理由はすぐにわかってしまった。

「ひゅーが。」
・・・・松山・・・・。
「なあ。寝てんの?」
寝てます。
と寝たふりを決め込んで無視していると、指で背中の上をなぞられた。
こそばゆくて思わず仰け反りそうになるが気合で我慢する。
「答え、でねーの?」
小さな声でそう呟かれる。
もぞもぞと動いていた指はやがて大きく動き出し、背中に何かの文字を書き始めた。

・・・・・日・・・・向・・・

ってお前・・・。
日向さんに「日向」って書いてどうすんだよ。
まだ「ス・キ」とかのがマシだぞ。
とか考えて、思わず「アホかーー!!」と即行自分自身にツッコミを入れる。
そのうち鼻歌で絵描き歌を歌いながら、ド●えもんを描き始めやがった。
「ヤメロ。」
「起きてんじゃん。」
半身ひねってひと睨みすると、再び体勢を戻し背を向ける。
「答え出たのかよ?」
「・・・・しつけーな。」
「俺、明日帰るんだけど。」
「そーかよ。」
「・・・・・」
松山の、小さなため息が聞こえた。

(続く)

すみません。
あまりに長くなってきて収拾つかないんで(ダメっ子・・・)
とりあえず前半だけ。
短くてすんません〜


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