かくして、おれの願いは届かなかった。

「先輩。おれ・・・黄金世代の中でも超一流の皆さんのプレーが本当に楽しみです。
あ、でも・・・勿論、呼んでもらったからにはおれも全力でプレーしますけどね!」

―ちくしょう・・・・・可愛いぞ・・・・・・・・・・・松山(小)。

そう、おれはこんな調子で『好き好き光線』を送ってくる松山と1週間を過ごしたのだった。
決して・・・・決して年下趣味ではないのだけど・・・・・・・。

「おれ、日向先輩に最高のパスを送るのが夢なんです」
俯いて、でも真っ直ぐに真剣な表情で言う松山(小)。
「ああ・・・・・・・・じゃあゴール前で待ってるぞ」
「・・・・・・・・・・・・日向先輩・・・・・・・ありがとうございます!」

紅潮した顔が全開で笑う。

・・・・・・・・・・・年下趣味じゃ・・・ない・・・そして、元の松山がおれは・・・・・・・・・・・
と、ごにょごにょと考えるけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
松山は松山だから・・・・・・・・・・やっぱり、魅かれていく自分を止められないでいるおれなのであった。



『happy man』4



「日向先輩!」
「お・・・・・おう」

合宿中はかなり・・・・かなり松山はおれにベタベタだった。
元の世界では・・・・絶対こんなにあいつはベタベタしてこないから。
というか、むしろその逆のはずだから・・・・・・・・・・・・・・。
嬉しいっちゃあ嬉しいんだけど。
でも、夜は逆に・・・・・・・たまにベタベタしてくるのになあ・・・・・・・・・・。
と、うっとりしていると、

「・・・・・・・・・・・・じゃあ、松山と日向は同室でいいか」
「て・・・・・おい・・・・・三杉!!」

三杉がトンでもねえことを言いやがった。

「だって、松山も嬉しそうだよ」
「でも・・・・・・・・・・・・・・・皆さんを差し置いて、おれなんかがいいんですか?
先輩たちも日向先輩と同室になってお話がしたいのでは・・・・・」

と、本気で可愛く松山が言うと・・・・・・・・・・『先輩たち』は大笑いだった。

「かまわんタイ。ワイら“日向先輩”と特にお話することはないタイ」
「せやせや、無愛想でめんどくさいんやで“日向先輩”は」

・・・・・・・・・・・ちくしょう。何でてめえらにお愛想を振りまかなきゃなんねーんだよ・・・・。
と、心で思うおれ。

「そうですか?ありがとうございます!先輩、おれ・・・・・・今日は寝られないかもしれません!」

ああ・・・・・なんて爽やかにそんなこと・・・・・・・・・・・・・・。
元の世界だったら本当に『寝かさない』のに・・・・・・・・・・・・・・。
そう思うおれは

「何だ〜松山、卑猥だな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

なんて冷やかしも聞こえない程、感動していたのであった。

実際の所。松山(小)は、おれに敬慕の念を抱いているけれども、 それは恋愛感情ではないようだった。
まあ・・・・当たり前といえば当たり前だけど。
おれは・・・というと、きまぐれな猫がたまに甘えてくるみたいな感覚で、可愛くって可愛くってしょうがないんだけど。
この小さな松山をどうこうしよう・・・とはさすがに思えなくって。
少なくとも、今のところ・・・・・なんだけど。

「・・・・・・・・・・・・・・小次郎」

呼ばれて振り返ったが、目線の先には声の主はいなかった。

「どこ見てるの?」

少し下を見ると岬はそこにいた。

「み・・・・・・・・・・・・・・・・・・岬!!
お・・・・お前もやっぱり、小さく・・・・・!!」
「え?」

でも・・・あれ??

「あれ?おれは・・・先輩だよな?“小次郎”はそのままなのか?」
「小次郎は小次郎でしょ?今更松山みたく“日向先輩”って呼んで欲しいの?」
「いや・・・・・・・・・・・・それはできればやめて欲しい」
「ところで」

岬(小)の目がキラッと光った。

「変な目で松山を見るのやめてくれる?」
「え?変な目って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今まではノン気だから大丈夫って思ってたけど・・・・・・・・・・油断も隙もないね」
「やっ・・・それはお前・・・・考え過ぎ」

ちくしょう・・・・・・鋭いぜ・・・。小さいからと言って、やっぱり岬は岬だ。
罪悪感で止まらない心臓の音を聞きながらおれはかなり怯んでいた。

「松山になんかしたら・・・・・・・・・・・生まれてきたことを後悔させてあげるからね?」

この頃の岬は本当に可愛いんだけど・・・・・・おれは一生こいつを可愛いとは思えないな・・・
とこの時確信したのだった。

とにかく、今日は取りあえず顔合わせだけで一日が終わった。
明日からは練習が始まるわけだし・・・・・まず、サッカーに集中だ。
おれはサッカーをしに来てるんだ・・・・・・と、自分に確認していると松山が側に寄ってきた。

「どうした?」
「日向先輩・・・・・・・・・・・・その・・・・・・一緒に寝てもいいですか?」

神様・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おれはこの1週間、犯罪者にならずにすむのでしょうか??
心の中で松山(大)の無事を祈りながら、同時にそのことも願わずにはいられないのだった。




(続く)



いやーんっっ
どどどど、どうする?!どうする日向さん!!!
松山(小)め… いけない子だわ〜



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