「い・・・・・・一緒って・・・・・」
「だめ・・・・・・・・・・・・ですか??」

大きなつり目で上目がちに見つめてくる。
おれの知っているあいつの目よりもっと大きくって、幼くって、無防備で・・・・・・・・・。
思わず息を飲む。

「・・・・・・・・・・・だめだ。こんな狭いベッドで2人だなんて。きちんと睡眠が取れないだろう?」

声が上ずるのを押さえながら、やっとのことでそう告げる。
まだ十分に暖房が効いていない部屋は息が白くって。
まるで体の熱を見られているようで、余計に焦りが募った。
ふと見るとその顔は寂しそうで、もう一度おれを見たその目は・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・・日向・・・・・・・・・・先輩??」

ちくしょう!!
何で涙目なんだよ!!!我慢できるかっていうの!!

ついつい・・・・・・・・その“狭いベッド”に思わず押し倒してしまったのだった。



『happy man?』5



「日向・・・・・・・・・・・先輩??」

びっくりした顔でもう一度呼ばれて我に返る。

「・・・・・あのな・・・・・・・・お前、そういう趣味の人間だっているんだぞ?」
「そういう・・・・・・・・・趣味って・・・・・なんですか?」

ぐわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!当たり前だよな!知らないよな!!
おれだって、自覚したのなんてずっと後のことだったし・・・・・。
でも・・・・・・・・・・・その目は、おれを見る時の松山と同じ・・・・・・・・・・・
そう、間違いなく、おれに恋している目だった。

「おれ・・・・・・・先輩のこと、お兄さんみたいに思ってて・・・・・・・・・・・・」
「え?」
「一緒にいると、何かこう・・・・・・・・・・嬉しくって心臓がドキドキするんです。
それに・・・こう、たまに・・・・・・ギュッてしてもらいたいっていうか・・・・・・
おれ、姉ちゃんがいるんですけど・・・・姉ちゃんもたまにおれをギューってするから
これはきっと・・・・家族に感じるような気持ちなんですよね。
でも・・・・・・すみませんでした。おれ、浮かれちゃって・・・・・・・
そうですよね。ちゃんと寝なくっちゃ・・・・・・・」

そう言って、自分のベッドに帰っていった。

「・・・・・・・・・・・そうだぞ。明日も猛特訓だからな!」

こいつは・・・・・・・・・・松山(小)はおれが好きなんだ。
そして、自覚がない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
困った・・・・・・・・・・もう一度あんな目で見つめられたら、おれは一体どうしたらいいんだ??
やっと暖房も効いてきたのか、呼吸の熱がおさまったのか、
漫画のふきだしのように浮かんでいた息の白さもなくなった。
だけど、今度は頭の中が白くなっていくようで、結局1人で寝ても寝不足気味になってしまったのだった。


***********************

「どういうつもりだ?」
「どういう・・・・・・・・って・・・・・・・・・・・・」

来たか・・・・・・・・・・・・。
恋人同士って言うから、取りあえず優しい感じで接していたつもりなんだけど・・・・・・・・。
やっぱり、『ここのおれ』とは違うんだろう。

「あ・・・・・・・松山、日向さんは今回ちょっと、調子が悪いんだよね〜」

って、横にいた反町が助け船を出してくれたけど・・・・・・・・・。

「風邪・・・・・・・・・・・・か?」

普段と違うのはそのせいと判断したのか、ちょっとホッとした後、それでも心配そうに見つめてくる目。
合宿に参加して、岬がでかくなってたのにもビックリだったけど、
松山が全然違う態度で接してくるのにはかなりビビった。
そう、どこが恋人だ??って思うほどケンカ腰で・・・・・・・。
だから、もしかしたらケンカ中なのか??って思って、『おれ・・・・何かしたか?』って聞いたら、いきなり殴られた。
『いっつもいっつも・・・・おれが嫌だって言っても聞かねえくせに!どういう嫌がらせだよ!』
って、そのまま部屋を出て行ってしまったのだった。
でも、そんな風に心配してくれるところを見ると、本当に『ここのおれ』が好きなんだな・・・・。
だから、松山が三杉に呼ばれて行ってしまった後、それとなく反町に聞いてみる。
もしかしたら、『ここのおれ』に何か問題があるのかもしれないし。

「なあ・・・・・『嫌だって言ってもおれは聞かねえ』って・・・・どういうことだ?」
「え・・・・・・・・・・・・・・・っと・・・・・・・・・・・・・・
それはつまり・・・・・・・・・・」

と、ちょっと明後日の方向を見て口ごもってしまった。

「キス・・・・・とかしてるってことか??」

思いきって聞いてみる。
キス・・・・・・・・・・・・おわあ・・・・・考えられねえ・・・・・・。
でも、その後に続いた言葉におれは思わず絶句してしまった。

「それ以上・・・・・・・・・・・だと思いますよ?」

それ以上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「そっ!!!それ以上?!・・・・・・ってことは・・・・・・・・・・!!」
「まあ・・・・・少なくとも松山から迫ってくることってないって聞いてますから・・・・・・
頑張って下さいね」

思いっきり同情の眼差しを向けられた。
あ・・・・・・あんな怒りに満ちたヤツをどうやって・・・・・・。
と、ここまで思って考えた。
もしかして・・・・・『何かした』んじゃなくって・・・『何もしない』から怒ってたのか?って。

それでも練習はまあ、元の世界通りに進んでいった。
ただ、三杉が『体調悪いんだ。道理で静かだ。いつもこうだといいんだけどね』って、
医者の卵とは思えねえことを言っていたけど。
本当に・・・・そんなにケンカ腰のヤツをどうして『ここのおれ』は好きになったんだろう?
でも、練習中におれに送られるパスは的確で。
元の世界の小さい松山が
『日本代表になって日向先輩にすっごいパスを送るのが夢なんです』
って、言っていたことを思い出した。
少なくとも・・・ここの世界の松山はその夢を叶えてるみたいだなって考えると少し良かったな・・・って思った。
あいつは・・・・・・・・・可愛かったよな。
勿論、『恋人』とか・・・・『キスしたい』・・・・とか、そんな意味じゃねえけど・・・・・。
『ここのおれ』はそういう意味で『ここの松山』が好きなんだ・・・・・とここまで考えて、
その松山の顔を見るとどうにも顔が赤くなってしまって、かなり困ってしまった。

「大丈夫か?日向。三杉の奴も薬くれるとかすればいいのに、ほっときゃ治るって。
確かにお前は薬嫌がるけど・・・。
練習中も顔が赤かったみたいだし・・・・・・。おれから言ってもらってこようか?」
「あ・・・・いい、大・・・・丈夫だ」
「そう・・・・・・・か?」

と言って、近づいてくる顔。
そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「た・・・・・・・たまには・・・・・おおお・・・おれからしてやっても・・・・い・・・・いいだろ?!」

どもりながら首から上を真っ赤にして後ろを向く松山。

―きききききききききき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

思わず手で口を押さえてしまった。

―お・・・・おれ・・・・・・・・・・・・・・大きい松山に・・・・・・・・・・キスされた!!

「お前も調子が悪いなら・・・・変なことしねえだろうしな!」

そう、やっぱりぶっきらぼうに言ってベッドに入っていった。

―本気で・・・・・・・・熱上がるぞ・・・・・おれ・・・・・・・・・・・。

暗くなった夜空に一つだけ見える明るい星を見ながら、早く元の世界に戻ってくれないかと祈るおれなのであった。






(続く)



松山(小)の自覚なしの恋心と、葛藤中の日向さん…
だがしかし!!!
松山(大)の微攻めに翻弄されるノンケの方の日向さんもたまらーんっっ
わくわくドキドキvvvv



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