さっきいた部屋どころか、先輩後輩含め宴会中の全ての部屋を訪問しては歌って踊って・・・
最後の方は歌も踊りもほぼ完璧になっていたのが逆に悔しいぜ。
しかもだんだん楽しくなってきちまったのがもっと悔しい、そんな俺デス。
それにしても、ここはどこの部屋なんだ???
行く先々で飲まされ、歌って踊って、なんだかわからんけどこの部屋に落ち着いた。
元いた部屋に戻らないと着替えられないんだけど、なんか、もう、めんどくせぇ・・・
「お・つ・か・れ〜」
「ぬおっ」
背中にのっしりと重みを感じる。
聞き慣れた声に後ろを見ると、予想通り、背中の上には反町が乗っかっていた。
「超ノリノリだったじゃんvvまっつん。」
にやにやと嬉しそうに笑いながら反町が言った。
「ただのヤケだ。」
「しかも超似合ってるし。」
「バカ言うな。っつか反町酒くせぇ。」
「あらん。人のこと言えるのかしら〜?光ちゃんvv」
・・・・酔ってるな。こいつ。
反町は酔っ払うとおネエ言葉になるので有名だ。
「おい反町!誤魔化すなよ!!」
と、遠くから誰かが叫んだ。
「罰ゲームちゃんとやれよ!」
「そうだぞ!逃げるなよ!!」
そこら辺にいた奴らが次々と文句を言う。
「・・・何の罰ゲーム?」
「UNO。ボロ負けしちゃってね〜」
「内容を聞いてんだ内容を。っつか重い。のけ。」
はいはい、とようやく反町から解放される。
それから立ち上がったかと思ったら大声で、
「では、男反町。約束通り罰ゲームとして、今ここで好きな子に告白しようと思いまっす!!」
おおおおおー と辺りでどよめきが起き拍手が沸き起こる。
「彼女イナイ歴1ヶ月。長い冬でした・・・」
反町のコメントに「ふざけんな!!!どこが長いんじゃーーっっ」という怒号が飛んだのは言うまでもない。
彼女がいなかった時期はほとんどないという話は本当なんだなあ・・・
ごめん、反町。
全然信じてなかったよ、俺・・・。
「レッツ告白ターイム!!」
「よっしゃ誰か反町の携帯持ってこい!!当然ケータイ番号くらい知ってる相手だろうな?!!」
「あ、イラナイイラナイ。」
全員が「へ?」という顔になった。
当然すぐ隣にいた俺も。
静まり返る中、いきなり反町が俺の首根っこを掴んで立ち上がらせた。
そして
「松山、好きだ。」
・・・・・・・・・・は???
「勝気なその瞳、まっすぐで気が強い性格・・・超超t超俺好みvvv」
「そ・・・」
「女の子だったら良かったのにーーーーっっ」
ぎゅううううううううっっと思いっきり抱きしめられ、俺は「ぎゃーーーっっ」と思わず声を上げた。
反町ーーーーっっ ふざけんなーーーーっっっ!!!
俺の声がみんなに伝わったかのように、「ふざけんな!」「ずりーぞ!!」
と、周りがぶーぶー言い出し、ビールの空き缶が飛び交う始末に。
そりゃそーだろ・・・
「だって、本当なんだもーん。」
だもーん じゃねえよ・・・
「っつか、まだ傷心中の身なんだからさー。逆に労われよな。お前ら。ねーvvまっつんvv」
「黙れバカモノ。」
ゴチン、と一発ゲンコツを食らわせる。
反町はゲラゲラと笑って、それからさっきまで飲んでいた缶ビールを飲み干した。
その後は何だかもう罰ゲームもなあなあな感じになっちゃって、みんなまたそれぞれ勝手に飲みだした。
夜も更けて、ロフトベットからは鼾が聞こえ始める。
宴会も大騒ぎからまったりトークモードに入ってきて、ほかの部屋もおそらくそうなんだろう、
全体的に静けさを取り戻しつつあった。
「反町。眠いのか?それとも酔ってる?」
「うーん・・・両方・・・かしらぁ?・・・ なんで?」
「無口で気味悪い。」
ふふふふ・・・と更に気味悪い感じで反町は笑った。
「まっつんさあ。それいつまで着てるのー?」
「ああ。忘れてた。」
本当に。すっかり。
最初はスカートがスースーして気持ち悪かったのに、いつの間にやら慣れてしまった。
慣れってこわい。
「なんつーか、目に毒なんですけどぉ。」
「今更何言ってんだ。」
「だって、まっつんマジ俺好みだし〜・・・」
「はいはい。」
「っつか、も、ホントに好き、だから。」
「もー、しつこ・・・」
い???
ふいに缶チューハイを握っていた指先にぬくもりを感じる。
顔を上げると反町と目が合って。
「本当に、本気って言ったら困る???」
「え」
わずかに重ねられた唇は温かいというよりは熱くて、キスをされたことよりもその温度に驚いて飛びのいた。
「・・・・・・っ///」
「あ、いたいた。松山ー。」
声に振り返ると扉の前に若島津が立っていた。
「これ、お前の服。」
ほいっ と投げられたのはさっきまで着ていた青いジャージ。
「あ、さんきゅー・・・」
「あと小島がお前のこと探してたぜ?」
「・・・うん。行く。」
立ち上がりながらもう一度反町の方を見る。
反町は・・・
何事もなかったように笑顔で俺に手を振った。
(続く)
|