どうも。井沢守です。
今、松山んち…ってゆーか、まあ、翼んちなんだけど、お邪魔していて。
「………」
これは…
なんでだ???
すっげーーーー すっっっっげーーーーーーーーーーー
気になるんだけどっっ!!!!!!
「テーブル出すから、適当に座ってろよ。」
「おっ おう。悪ぃな。」
言われた通り、とりあえず腰を落ち着ける。
それにしても… さっき、何気なく見つけてしまった…
何故に松山の机の上に、日向の雑誌の切り抜きが…?!!
「………」
あれ、こないだのやつだよな???
岬に見せてもらった雑誌の…
翼とか、三杉とかも載ってて。
なんで若林さんは載ってないんだーーーーっ て、来生と滝と騒いだやつ。
日向と、松山って、仲悪いと思ってた。
でも…
松山、もしかして俺と同じで…
「井沢。何か飲む?」
「お、あ、サンキュー。もらう。」
「えっとー オレンジジュースかアップルジュースか… あったかいのが良ければコーヒーか紅茶か牛乳か…」
松山が折りたたみ式のテーブルを出しながら言った。
「じゃあ、コーヒー。砂糖だけでいい。」
「えー。牛乳いれねえの?!」
「ミルクって言えよ… 入れない。」
「へー。わかった。ちょっと待ってて。」
松山はバタバタと部屋を出て、階段を降りて行く。
…ああ、気になる…
俺じゃない誰か(新田とか石崎とかそこらへん)が気付いて、ポロっと聞いてくれればいいのに。


「俺、井沢と同じクラスで良かったー。数学さっぱりでさ〜。」
明日のテストで出るところが、全然分からない らしい。
「で、この公式を使うだろ?」
「あ!そっかそっか〜 なるほどね〜」
松山って飲み込みは早いんだよな。
真面目に勉強すりゃ成績なんかすぐ上がりそうなのに、なんつーか、サッカーに割く時間が多過ぎんだよ…
「松山 入るよ。」
ドアをノックする音と一緒に岬の声が聞こえた。
松山が返事をするとドアが開いて、岬が部屋に入ってくる。
「はい、これ。」
「おvvケーキだ〜vv」
「ナツコさんが持ってけって。こっちに置いておくよ。」
言いながら、岬は松山の勉強机の方にケーキの乗った皿を2つ置いた。
トレーの上には、まだケーキが2つ乗ったまま。
「あれ?岬は一緒に食べねーの?ってか、2つ食うのか?」
松山が小首を傾げながら尋ねる。
「ううん。これは僕らの分。こっちもテスト勉強なんだ。じゃね。」
僕ら???
トレー片手に岬はドアへと向かう。
俺と松山が顔を見合わせていると、岬が出て行った後に「お邪魔します」と声が聞こえた。
「……井沢、今の誰?」
「し、知らね…」
そう。声の主は、女子。
女   子  ぃ  ぃ  ぃ 〜〜〜?!!!!!
チラっと見えた、ひとつに結んだ長い髪。
うちの高校の制服。
見たことねえぞ?誰だ???俺と中学一緒じゃない子だよな?
「岬って、彼女いたんだ。」
松山に尋ねたが、
「俺… 聞いてない…」
すっかり固まっちまっていた…。




松山よ… これは軽犯罪ではないだろうか…
「おい」
「しっ」
俺は松山と一緒に、向かい側の岬の部屋のドアの前で耳をそばだてている。
松山ときたら、岬と岬の彼女(仮)のことが気になって気になって気になって気になって
全く勉強にならないんで、俺が「確かめてくれば?」と言ったらこうなった…
いや、思い切って聞いて来いって意味で言ったのであって、
決してこんな、盗み聞きのような真似をしろと言ったつもりはなかったんだけど。
しかも、「一人じゃ不安だから!」とか言って、俺も道連れにされるし。
それほど厚くもなさそうなドアの向こう側から聞こえるのは、古文と思われる単語ばかり。
真面目に勉強してるっぽいな。
っつか、彼女だったとしても、こんな向かい側に同級生、
階下にはお世話になってる友達の親と弟がいる所でイチャコラ始めるほど岬も馬鹿じゃないって。

ガチャっ

「?!!!!」
「何してんのさ…」
「べっ… 別にっ   さいなら!!!!」
さいならって… 松山;;;
突然岬がドアを開けたので、本当に心臓が止まるかと思ったぜ…
松山は俺の腕を掴んで、大慌てで自室に戻った。
「もーーーーー  本当に彼女なのかなあ〜〜」
「知らねーって。ほら、諦めてさっさとやれ。俺もう帰るぞ。」
「見捨てるなよ井沢ぁ〜」
松山も、結局何なんだよ。
日向が好きじゃないのか?岬のことが好きなのか??
岬は兄弟みたいなもんだから、気になるのか???
「分かった。俺が明日それとなく聞いておいてやるから。とにかくやれ。」
「マジか?!!ありがとう井沢!!!俺、頑張るっ」
………単純。




で、翌日。
「彼女?まっさかー。あれ、うちのクラスの大野さん。
 今日古文のテストがあって、一緒に勉強してただけだよ。」
「ふうん…」
昼休み、隣のクラスの岬を捕まえて屋上に連れてきた。
俺の質問に翼母のお手製弁当を食べながら、岬は何でもないというようにあっさり答える。
岬はそう言うけど、大野さんって子は少なくとも岬に好意を持っていたんじゃないのかな…
どういう経緯でそうなったかは知らないけど、一人で男子の家に上がるくらいなんだから。
「ま、帰り際に告白されたけどね。」
そうそう。告白とか
…って!!!
「は?!!!」
「だから、付き合って欲しいって。」
「…そそそ そうなのか?」
「うん。断ったけど。」
あああああああ…
やっぱりねえ。ですよねえ。
でも岬も、そういうの何となく分かるだろうに、安易に自分の部屋に入れるのはどうかと思う。
俺は持っていたパックの牛乳を一気に飲み干した。
「何?井沢、松山に頼まれた?」
って、完全にバレてるし。
素直に「そーだよ」と答えると、岬は「やっぱりね」と笑った。
「困るよね。松山、僕のこと好きだから。」
「…そーなの?」
「そーだよ。わざわざ北海道から私立でもないうちの学校に転校してくるなんてさ。
 僕のこと、好きなんだよ。」
うーん、それはよく分かんねーけど…
それにだいたい、松山って日向のこと好きなのかと思った。
勉強机に切り抜き挟んでるくらいだから。
「僕には心に決めた人がいるのに」
「え?!」
岬がまたとんでもない発言をぶっこんできたので、思わず持っていた弁当箱を落としそうになる。
「だ、誰?」
「秘密〜ww」
まさか
「…わ、若林 さ」
「違うから」
言い終わる前に即答されて、俺は「早!!」とツッコミながらも心底安堵した。
岬相手じゃ、正直勝てる気がしない。良かった…
じゃあ、誰だ??
「そー言えば若林君で思い出したけど、来週帰って来るんだってね。」
「……え?」
「メールきてたよ?夕食ご馳走するから家に来いって。」
「………」

聞いて ません けど????




滝にも、来生にも、石崎にも、森崎にも、後輩の新田にもメールは来ていた…
泣きそうです若林さん…
って思っていたら、2日後に俺にもメールがきた。
『帰国する。土曜日19時に会おう。』
簡潔なメール。
…俺って、
自分が思ってるほど、想われてなかったんだなあ…
「……はあ…」
凹む…

土曜日。
部活から帰って着替えて、そろそろ若林さんの家に行こうかなと重たい腰を上げる。
特に約束してないけど、方向的には石崎の家が通り道になるから寄って行こうかな…なんて考えていたら
「守〜っ 若林君が来てるわよ〜」
母ちゃんの声に思わず
「何で?!!」
と言ってしまった。
バタバタ階段を降りると、母ちゃんに「何でって、知るわけないでしょ」と言われて。
靴を履いて外に出ると、そこには
「よう。」
「わ… 若林 さん」
「ただいま。」
「あ… はい おかえり なさい」
「何て顔してんだ井沢。」
また、背が伸びたんだろうか…?
体格も良くなった気がする。
…… っつか、やっぱカッコイイ…///
「乗れよ。」
黒塗りの車が停まっていて、運転手さんがドアを開けてくれた。
「し、失礼します。」
何が何やら…
俺は言われるがままに後部座席に乗り込むと、続いて若林さんも乗り込んできた。
「あの」
ゆっくりと車が動き出す。
「若林さんの家に行くのに、わざわざ迎えに来てくれたんですか?」
「俺の家には行かないぜ?」
「え?だって…」
「今日は俺のお気に入りのフレンチレストランを予約している。」
「でも、みんなは」
「みんながうちに来るのは明日の夕方だ。」
若林さんが見せてくれたメールには
『帰国する。日曜日の17時、若林家に集合。夕飯は抜いて来いよ。』
…俺のと…違う…?
「こっちは一斉メール。お前に送ったのは、お前にだけ送ったメールだ。」
「っ…///」
「俺と二人きりじゃ不満か?」
「いいえ!!!!」
俺は思いっきり首を横に振った。
胸が、熱くなる…
今にも溢れてしまいそうな涙を、ぐっと堪えた。
「二人だけで、話がしたかったんだ。井沢と。」
「……  はい」
若林さんの笑顔に、ふわりと温かく包まれた気がした。
それから
俺はやっぱりこの人が好きなんだと、あらためて確信した。




(完)


第2話は源守です。
なにげに源守派です…
源松も源岬も好きだけど!!!ええ!!
っつか、若林さんはモテモテでいて欲しいvv


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