駅前のコンビニにしか売ってないアイスを買いに行ってこよ〜っとウキウキで出かけようとしたら
俺も俺もと結局パシリにされた反町一樹@東邦学園高等部です。どうも。
まったくも〜
他はいいとして、日向さんちゃんと金払う気あるんだろうな…
意地でも徴収するからな!!!
東邦学園は幼稚園から大学まで同じ敷地内にあるので、とにかくバカでかい。
敷地内を自転車で移動しないとしんどい。
そんなこんなだから、敷地内には図書館はもちろん、病院もコンビニもファストフード店もジムもあって
そこから出なくても暮らせていけてしまうぐらいだ。
俺は逆にそれがあんまり気にいらなくて、時々こうして遠くまで買い物にきたりする。
最寄りの駅は「東邦学園前」だが、『前』と言っても学校のすぐ目の前に駅があるわけじゃない。
駅から自転車で10分くらい。
学園内に入っても、俺達が生活する高等部の寮までは5分はかかる。
無事、目的のコンビニに辿りついて自転車を止める。
中に入ろうとしたところで、ベンチに腰を下ろし、大きな荷物抱えてうなだれている人物に目がいった。
たまたま目に入っただけだったが、どこかで見覚えがあるような…
ん?
あれは…
「…もしかして、松山?」
「?!!」
がばっと顔を上げたので、こっちがびっくりしてしまった。
「うおっ」
「っ… あ… ええとお前は」
「反町。反町一樹だよ。去年の全中サッカー大会で会っただろ?」
「っ… っ…」
「……え?」
「うわああああああんっっ」
ええええええ?!!!
いきなり俺に抱きついてきて、「うわああああああんっ」って叫んで。
「俺っ 俺っ もう東邦学園には辿りつけないかと思ったよ〜っっ」
「ちょっ ちょっと落ち着けって!!」
「岬が1時間もあれば着くとか言うから!!でも東京駅から全然分かんなくて!そんでっ」
「分かった!分かったから落ち着け!!な!!」
半泣きでパニくる松山をどうにか落ち着かせ、すぐ近くにあるよく行くカフェに入った。
ユニフォームかジャージ姿しか見た事がなかったから、松山の私服姿は不思議な感じがする。
TシャツにパーカーにGパン、スニーカー。
いたって普通の格好だけど、1つ1つのチョイスは悪くない感じだ。
奢ってやるから好きなもの頼め、と言うと、松山は「ありがとう」と言いながらチョコレートパフェを頼んだ。
人の奢りでパフェ食うか…?普通…
ま、いーけどさ。
俺はコーヒーを頼んで、とりあえず松山の話を聞く事にした。
「で?まず何しに来たんだ?」
松山はチョコレートパフェを頬張りながら話し始める。
「うん。岬がな、せっかく静岡に越してきたんだから、日向にでも会いに行ってきたらいいだろって」
「ああ。松山って、南葛高校に入学したんだったな。」
「うん。」
「で、なんで日向さんに会いに?」
「…え。さあ、なんでだろ。岬がそう言うから。」
…全然意味分かんねえよ…
岬もなんでそんな事言うんだろ???
「俺、この連休で法事があって地元に帰らなきゃならないから。明日の飛行機で北海道帰るんだ。
だからついでに寄ろうかなって思ってさ。」
「ああ。そうなんだ。」
「でな。岬が言ってたんだ。東京なんか新幹線乗ったら1時間ちょっとで着くって。」
それは、あれだな。静岡駅→東京駅の時間だろうな…
「東京駅に行ったら、東邦学園の場所もすぐ分かるもんだと思ってたんだけど全然分からなくて」
「お前、どういう思考回路だそれ…」
「で、駅員さんに聞いたらどの電車に乗ればいいか教えてくれたんだけど、乗り換えが2回もあって」
2回もって、2回くらい普通だと思うけど…
まあいいや。
「で、最初の電車は上手く行ったんだけど、次の電車が超満員で降りたい駅で降ろしてもらえなくて
5つ先くらいの駅でやっと降りれて、戻って、そしたら快速かなんかに乗っちまったみたいで
目的の駅は止まらなくて。それで」
「分かった分かった。とにかくどうにか必死で、この駅まで辿りつけたんだな。」
「…昼には着いてる予定だったのに…」
すでに18時はまわってるぞ…
すごい勢いで東京の電車に振り回されたんだな。可哀そうに。
「ところで、明日の飛行機で帰るんだろ?今日は?ホテルでもとってあったのか?」
「…ホテル?」
「だって、泊る予定だったんだろ?」
「………」
それも考えてこなかったのかーーー!!!
ある意味すごいな松山…
「分かった。うちの寮にこっそり泊めてやるよ。とりあえず、そのパフェ食っちゃえよ。」
「お、おう。悪いな。」
ガツガツと残りを慌てて口にかっこんでいく。
…変な奴…
仕方なく俺はアイス購入を諦め、代わりにコンビニで松山用の食料を買い込んで、
松山の荷物を自転車の前かごに、後ろの荷台に松山を乗っけて自転車を漕ぎだした。
…めっちゃ重い……
見つからないようにこっそり寮の裏口から侵入し、大急ぎで自分の部屋に松山を連れて行った。
「?!!松山?!!」
「よう若島津。」
「…なんで」
同室が健ちゃんでホント良かった。
松山なら俺よりも付き合いが長いはずだから話は早い。
「駅前で拾っちゃった。」
「拾っちゃったって、反町…」
「なんか、日向さんに会いに来たんだって。」
「日向さんに?何で?」
「よく分かんない。」
若島津は「まあ座れ」と、松山に勉強机の椅子を引っ張り出して座るようにすすめた。
「じゃあ、俺、日向さん呼んでくるよ。」
俺は松山の相手を若島津に頼んで、隣の隣の部屋の日向さんを呼びに行った。
びっくりさせようと思って「日向さんに会いたいって人が来てますよw」とだけ言ったのに、なぜか日向さんは
「それは、もしかして松山か?」
と聞いてきた。
「あれ?知ってたんですか?」
「……まあ。」
「なんだ。つまんなーい。」
「ところで反町、アイスはどうした?」
「あ。色々ありまして買えませんでした。」
「何?!!」
「健ちゃーん。入るよ〜」
なんだかよく分からないけど、とにかくついに、松山は日向さんとご対面できたってわけだ。
「…松山」
「おう」
「何してんだ?お前」
「メールしただろ」
はあ〜 と、日向さんが大きなため息をついた。
「オマエな、あのメールで何を察しろってんだ」
「? あのメールって?」
気になって聞いてみると、日向さんはジャージのポケットから携帯を取り出して見せてくれた。
「…首洗って 待ってろ…? ぶはっ」
思わずゲラゲラ大笑いしたら、松山に笑うな!って怒られた。
いやいや、笑うしかねーだろ!!!
「とにかくです。」
健ちゃんが口を挟む。
「今夜は日向さんの部屋に責任もって泊めてやってください。」
「は?!!何でだ?!!」
「あんた、今一人部屋でしょう?」
「それは、そーだが」
「それに、松山はあんたに会いに来たんですよ。」
「そんなの俺の知ったこっちゃ」
「じゃあ、このまま松山を放り出しますか?」
「う」
日向さんはチラリと松山の顔を見る。
その時松山がどんな顔をしてたのか俺からは見えなかったけど、何か諦めたみたいに、またため息をついた。
「分かったよ。」
「松山。うちの寮はとにかく厳しいんだ。絶対バレるようなことがないようにな。」
健ちゃんが言うと、松山は「分かった。」と頷いた。
「明日は休みだから問題はないと思うけど、バレないうちに朝一で寮は出ろよ。」
「うん。でさあ、こっから羽田ってどうやって行くの?」
「………」
ダメだ…
松山が予定通りの飛行機に無事乗れる気がしない…
「日向さん。松山、羽田まで送ってやって下さい。」
「なんだと反町!!」
「だって、今日も東京駅から何時間もかけてようやくここに辿りついたんですよ!!危険すぎるでしょ!!」
「…なんで俺が…」
仕方ない俺が送ってやろうかな、と言おうとしたけど、意外にも日向さんは「しょーがねーな」と言いながら
松山を送ってやることにしたっぽかった。
「じゃ、行くぞ松山。」
「おう。それじゃ、ありがとな反町。」
日向さんと松山は音を立てないように部屋を出て行った。
「ねー 健ちゃん」
「うん?」
「あの二人って、デキてんの?」
「……さあ」
さあって、健ちゃん;;
「そこは否定しないんだね。」
「肯定もしないが。」
ま、いいけど。
これ以上健ちゃんにあれこれ聞いても多分何も出てこないだろーし。
「俺、松山後ろに載せてチャリ漕ぎまくって疲れたから、ちょっとだけ寝るわ…」
「おう。お疲れ。」
「けーんちゃんw」
「何だ?」
「おやすみのチューは?」
「……」
健ちゃんは少しだけ困った顔をして、でも優しくキスをしてくれた。
それから頭をくしゃくしゃと撫でられて。
「おやすみ、一樹。」
健ちゃんは照れまくってるけど、俺は幸せいっぱいvv
日向さんと松山は、今頃どんな会話をしているのやら…
二人の関係はよく分かんないままだけど、なんならこの俺の幸せを、ちょっとだけ分けてあげてもいいよ☆
(完)
東邦編。
ホモばっかだな!!!とツッコむ私。
松山はいつでも道に迷って欲しい。(笑)