仄かに頬を赤く染め、小さく笑顔をつくって見せる松山の横顔。
こんなに浴衣が似合っていいんだろうか?
男なのに。
こんなに赤い花の髪飾りが似合っていいんだろうか?
男なのに。
「日向。」
うっすらと引かれた紅。
果実のようなその唇が、俺の名前を囁く。
「日向。」
もう一度。
右手をそっと顎に添え、親指で唇の形をなぞる。
サッカーしてる時とは全く別の、松山の体温。
遠くでヒグラシが鳴いた。
終わり行く夏を名残惜しむように。
閉じられた瞳に吸い寄せられるように、
俺は自分の唇を、ゆっくりと近づける・・・・
「っ・・・・・・」
「おはようございます。」
「のぅっ?!わ、わか・・・」
「わかしまづですよ。あんたの素敵な幼馴染の。」
・・・誰が素敵な幼馴染だ・・・。いきなりどアップで現れるな・・・。
俺はベッドから上半身を起こした。
「をや。朝からお元気なことで。あ、朝だからか。」
「?」
ちょいちょい、と、若島津が指さした方向に目をやると、
下半身の俺様がご機嫌ちゃんにテントを張っておられます・・・。
「冷静にツッこむの、やめてくんねえかな・・・。」
「そっちこそパン一で寝るの、いい加減やめたらどうですか?体調悪くしますよ?」
・・・だってまだ暑ぃんだもん。
俺はもそもそとベッドを下り、クローゼットに向かった。
時計はまだ5時を過ぎたところ。もちろん早朝のだ。
今日は学園祭最終日だが、ここんとこ部活もしばらく休みだったので身体がなまって仕方ない。
さらに松山のせい、と、俺は決め付けているのだが、なんとなくイライラ、モヤモヤして、
こういう時はボールを蹴るのが一番!と、若島津を付き合わせることに昨晩決定したのだった。
(の、割には寝坊した・・・。)
「何か、いい夢見ましたか?」
若島津が部屋のカーテンと窓を開けながら言った。
途端に早朝のひんやりとした風が入り込んでくる。
「寝言、言ってましたよ。」
「え?!」
思わず血の気が引く。
例え夢の中だろうと、女装していようと、この俺が松山なんぞにあんなこと・・・
「・・・松山」
「あ、いや、そ、それは・・・」
「が、いますね。」
「は?」
「考えることは同じですかね。」
若島津が覗き込む窓の外にはグラウンド。
Tシャツを被りながら近づき覗き込むと、無人のゴールに向かってボールを蹴り続ける、ヤツの姿があった。
「まあ、松山のことじゃ今日だけじゃなくて、部活が休みだった間中、毎日蹴ってたのかもしれませんね。」
行きましょか、と、若島津は机の上に置いてあったグローブを手に取った。
いや、ちょっと待て。大事なことまだ聞いてないぞ!
俺は慌てて若島津を呼び止める。
「おい。」
「はい?」
「寝言って・・・」
「・・・ああ。」
若島津はポンと手を叩き、何やら考えるフリをする。
っつーか、なぜ考える必要がある!
「もう、おなかいっぱいだブー。むにゃむにゃ・・・って。」
「・・・・嘘だろ。」
「嘘です。」
「・・・・・・・・・。」
どうかしている。
あんな夢見るなんて。
グラウンドに出てからも、まともに松山の顔が見れない。
モヤモヤが増しただけだ。
「晴れて良かったな。」
練習後、水道の水を頭から被っていた俺の横で声がした。
「きれいだろうな。俺、今年見るの初めて。っつーか、最初で最後か?」
顔を上げると、空を仰ぐ松山。
「ちょっと季節外れだよな。花火。」
「・・・ああ、」
花火のことか・・・。
「夏も終わりだな。」
松山が持っていたボールを上に投げる。
抜けるような青空に吸い込まれていくボールと松山の背中。
もうすぐ、夏が終わる。
to be continue・・・
ああ?!もうどんどん長くなって!!どうしましょう・・・。
あと、二話くらいで終わる・・・といいなあ・・・。(遠い目)
うちのわかしーって、なんかちょっと変ですね。(笑)
みさっくん、三杉参謀に次ぐ遊んでしまうキャラです。
でもみんなでいる時は一応「ツッコミ」に徹します。
代表メンツは「ボケ」が多すぎて、ツッこまざるを得ないらしい。
俺は計算でボケたいのに、天然が多すぎるんだよ!!と内心思っています。