暗闇の中に舞う火の粉は、まるで蛍のようだった。


表彰式で舞台に上がったのは立案者の反町、と、無理矢理引っ張られた松山。
二人ともまだ女装浴衣姿のままで。
ついには男にまで声援を浴びる始末。
松山に至っては「光ちゃ〜ん☆」なんて言われたりして・・・
まあ、さすがにそれに笑顔で答えるほどバカではなかったようだが。

「・・・・日向さん、機嫌悪いんですか?」
隣に座っていた若島津が、俺の顔の前にタコ焼きを差し出し、俺はバクっと食いついた。
「面白くないって顔してますよ。」
「何がだ?」
「さあ?何がです?」
講堂での表彰式の後、グラウンドの中央ではキャンプファイヤーが始まった。
キャンプしてるわけじゃないからキャンプファイヤーというのが正しいのかどうかわからんが・・・
とにかく、この学園祭で作った大道具だの立看板だので、来年に持ち越せそうにないものを盛大に燃やすのである。
グラウンドは開放されたままで、もうすぐ始まる花火大会をここで楽しもうという近隣住民も結構来ている。
わざわざ混む河川敷まで行くよりは、こっちの方がのんびりできるというわけだ。
学園内なので飲酒はできないが、逆にそれが安全で良い、ということでファミリーも多い。
それから、素敵な恋の出会いを求める(?)近くの女子高生も。

浴衣から制服に着替えた俺と若島津は、校舎とグラウンドの間にあるコンクリートの階段に腰を下ろし
さっき商店街まで出向いて買ってきたタコ焼きを頬張りながら、花火大会が始まるのを待っていた。
反町と松山は化粧を落とすのに時間がかかっていて、なんとなくいつの間にか別行動に。
いや、別に常に行動を共にしているつもりはないんだが・・・
「しかし、何ですね。こんな時くらい、隣に女の子がいてもいいかと思うんですが。」
「全くだ。」
「なんで日向さんなんでしょうねえ。」
「なんで若島津なんだろうな。」
これも幼馴染の暗黙の了解で、それ以上突っ込んだ話をする気にもならん。
若島津に今好きな子がいるかどうかとか、どんな子が好みなんだとか、本当に知りたくもないのだ。
若島津もたぶんそう思っているんだろう。
なんか不毛な会話だな・・・とか思っていたら、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。

「あ!いたいた!!日向先輩〜!!」
振り返るとそこにはサッカー部の後輩の・・・ええーっと・・・名前なんだったかな?山・・・山本?山下?山田?山・・・
何せ部員数が多くて覚えきらない。
「少しいいですか?」
「?おう?」
ごにょごにょと耳打ちされる。
「・・・・・・何ぃ?!」
「と、いうわけなので、よろしくお願いします!」
「いや、ちょっと、」
「あ、一応俺の幼馴染なので、あんまりこっぴどい仕打ちはしないでやって下さいね。じゃあ失礼します。」
「おいっ・・・」
山・・・なんとかはさっさとどこかに行ってしまった・・・。
いい根性してるじゃねえか・・・。山なんとか君よぅ・・・

「?どうしました?」
「いや、ちょっと行ってくるわ・・・」
「花火始まりますよ?」
俺だって行きたくて行くんじゃないっつーの・・・。

若島津を残し、俺は山なんとか君が言っていた東門を目指す。

別に無視する事だってできたんだが・・・。

相手はすぐにわかった。
門の脇で、俯き加減にじっと佇んでいる、髪の短い背の小さめな女の子。たぶん年下。
割とかわいい、と思う。
俺を見つけて、ぺこり、と頭を下げた。
「すみません。急に呼び出したりして。」
「いや・・・」
「山西君からだいたい聞いているとは思うんですが・・・」
ああ、山西だったのか。あいつ・・・
「私、ずっと前から日向さんのこと好きでした。良かったらお付き合いして頂けませんか・・・?」
・・・はあ・・・。
自慢じゃないが、こういうことは一度や二度じゃない。
だからある程度は慣れているつもりなんだが・・・
やっぱり苦手だ。
真剣な気持ちを正面から受け取るにはそれなりの姿勢と覚悟が必要だ。
それは充分わかっているつもりなんだが、結局返す台詞はいつも同じ。
「気持ちはありがたいけど・・・」
「そうですよね。サッカーで忙しいですよね・・・」
俺の言葉を遮って彼女が言った。
「・・・ああ。」
「でも、じゃあ、日向さんは好きな人はいないってことですか?」
「・・・・・・・」
少し思い切ったような、彼女の言葉。

(好きな、人・・・)

そして、ふいに頭の中を過ぎった顔。

「私、それなら諦めま」    
「・・・いる。」
「・・・・・え・・・・?」
女の子の目が大きく見開く。
「好きな人、いるから。」
「・・・・・っ」
見る見る間に顔が赤くなり、大きな瞳が涙で潤んでしまった。
いくら俺でも、女の子に泣かれるのはさすがに厳しい。ちょっとだけ罪悪感・・・
彼女は何も言わずに、急に走り去ってしまった。

人ごみの中に紛れていくセーラー服の白を目で追いながら、俺自身もまた、自分の口にした言葉に戸惑っていた。

さっきの言葉は彼女を諦めさせるのために吐いた嘘ではない。
わざわざそんなことはしない。
瞬間的に、本能的に、俺の口はその言葉を紡いでいたのだ。
 
(・・・・・・どうか、している・・・。)
全ては今朝の夢のせいか?
頭の中をよぎったのは、他でもない、浴衣姿の松山だったのだ。

「っ・・・」
彼女が走り去って開けた視界の向こうに、松山の姿があった。


to be continue・・・

やばいです。どんどん長くなってます・・・。
どうも、これまた、お時間のある方だけお付き合い下さいマセね〜

うちの高校の学園祭はぱっとしませんでした・・・。
いや、私があまり学校が好きじゃなかったから、だけなのかもしれませんが。
模擬店とかやってみたかったな〜
舞台系ばっかりだったもんな〜

だんだん二人が近づいていきます。
目指す方向はある程度決まっていますが、やっぱり基本は書きながらなので・・・
どうなるんでしょう?!私にもわかりません!!(笑)

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