女の子の胸とは、こうもやわらかいものなのか・・・
決して大きくはないが、ちょうど掌に収まるくらいなのが逆にいい・・・かも。
とか、そんなスケベなことを考えていると、黒い大きな瞳がじっとこちらを見ていることに気づいた。
「わ、悪ぃっ・・・///」
慌てて手を離す。
あんまり恥ずかしくて照れくさくて、俯いた顔から火が出そうだった。
サッカー一筋、男子校寮生活の日向である。
女の子の胸を触るなんつーことは頭の片隅にすら思いもつかないことで。

「日向・・・」
「・・・・おう・・・」
ハスキーボイスであるはずの松山の声が、妙にかわいらしく耳に届く。
「日向は、俺のこと、どう、思ってるんだ?」
途切れ途切れに松山が呟いた。
「ど、どうって・・・」
日向の頭の中は完全にパニック状態だった。
松山は女で、俺のことが好きで、そして俺は今・・・

告白の答えを待たれている男・・・?!

シーツをぎゅっと握りしめる。
告白されるのは初めてじゃないが相手が相手だ。
だがここで逃げるわけにもいかない。
それが・・・それが男ってもんだろう?!!!

日向は覚悟を決めると顔を上げた。
「俺は、お前のこと」
「ああああああーーーーー!!!!」

文字通り、耳を劈くような悲鳴が聞こえた。
「何やってんだよ!!同点になっちまったじゃねえかよ!!」
・・・・松山の、声・・・?
ぼんやりした日向の視界に入ったのは・・・
「おう。悪ぃ。起こしたか?」
「松山・・・?」
「てめぇが寝てる間に追いつかれちまったじゃねえか。」
全開の窓のサッシに手をついて、松山は不機嫌そうに言った。

合宿所の医務室。
窓の外からは三杉が指示する大きな声が聞こえてくる。

(ん?デジャヴ?)

「おい、大丈夫か?」
「脳震盪、か・・・」
「はあ?何言ってんだよ。そんな大層なもんじゃねえだろが。心配かけやがって。」
ふん、と鼻を鳴らして、松山はベッドの横の丸椅子にどっかり腰を下ろした。
「ぶっ倒れたかと思ったら、ぐーすか寝てやがってよ。なんだ?柄にもなく寝不足か?」
「・・・・・」
日向はゆっくりと身体を起こした。
(・・・寝てた?ってことは、夢?)
確かめるように自分の両手を見つめる。
妙にリアルだった胸の感触が夢だと知って、なんか、すっげーもったいねーことした!とか思ってしまう。
「ま、いいや。俺戻るからな。俺とお前が抜けた途端に形勢逆転しちまった・・・」
勢いよく立ち上がる松山に、夢の中のしおらしさのカケラもない。
いつもの、喧嘩っ早くてぶっきらぼうな松山の背中だった。
「ちょ、ちょっと待て!」
「うん?」
思わず日向は松山を引き止めた。
「?何?」
「お前・・・ 何か悩んでることとか、ないか?」
「???」
あからさまに「?」を頭の上にいっぱいつけて、松山は首を傾げる。
「ねえよ。」
「いや、あるだろ。なんか、こう、人に言えないような隠し事・・・とか。」
「ねえよ。」
「言ってみろって。」
「仮にあったとして、なんでお前に言わなくちゃならないんだよ。」
「・・・・・」
ものっすごく普通に当たり前の事のように言われて、日向は「ああ、そう・・・だよな・・・」と答えるしかなかった。
「?なんか、お前、変だぞ?」
松山はもう一度丸椅子に腰掛けた。
「打ち所悪かったか?」
日向の長めの前髪をどかすようにしながら、右手が額に触れる。
「っ・・・///」
触れられた手の体温に、日向の胸が高鳴った。
「顔も赤いぜ?熱でもあるんじゃねえの?」
松山の顔が近づいてきて、てん、と額と額がくっついた。

そして日向は・・・完全にオーバーヒートしてしまった。

(続く)

毎度!夢オチいえ〜☆
って、たぶんみんな気づいてたですよね。(笑)
もう、年取るとワンパターンでいけませんね。
年齢的なアレだと思って、見逃してください。

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